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うずまきぐ~るぐる

本の紹介や日々のことをぐるぐるかきます

沖で待つ:絲山秋子

本の紹介(女性作家あ行)

沖で待つ絲山秋子著のレビューです。

沖で待つ

沖で待つ

 

 

◆パンチが効いている文章に惹き込まれ、休む間も与えられませんでした

 

 

大事に読もうと密かに積んでおいたこの本。

視界に入り1ページだけ読んだが最後。
結局、最後まで読み通してしまいました。

 

それもこれも1編目の「勤労感謝の日」の登場人物の女性が

あまりにも痛快で、たった数ページでなんかこの人と友達に

なれるって思ってしまいグイグイ惹き込まれてしまいました。

 

理不尽なことで会社を退職した30代の独身女性が、

お見合いをすることになる。
やって来た男性は仕事好き人間。

スナックのロゴが貼り付けてあるピンクの百円ライターを

お見合いの場で使うような、女子なら誰でも顔を背けたくなるような
無神経な男。

 

その男との会話のやり取りで、この女性が心の中で毒づく言葉の数々が、
恐ろしいほど的確で面白い。

 

例えばこの男の顔を「あんパンの真ん中をグーで殴ったような顔」と

表現している。ぷっ。

 

絲山さんって主婦といい、独身女性といい、女性たちの持つ細かい心理、
特に黒い部分をなんでこんなにもバシッとカラッと表現してくるのだろう。
そしてどんなに毒っけがあっても、不思議と厭な感じは残らない。
そこがたまらない魅力、私がハマった部分ともいえます。

 

さてこのお見合いの行方は…。

お見合い現場をあとにした彼女の行動なんかも妙にリアル。

見合いの報告を女友達にするシーンでの女子同士の会話も
なかなかの臨場感です。

 

そうこうしているうちに、読み終わってしまう…

あぁ、もっとこの話読んでいたい…。
で、勢いに乗り、表題作も読んでみる。

 

同期入社の男女の友情を扱った作品。地方勤務になるこの二人。
右も左も解らなかった状況から成長して行く過程とともに、

静かに友情をあたためていく。

 

同期の結束って結構固いとか、常に気にかけている存在とか、

そんな彼らの様子は、若き日を思い出さずにはいられない

会社ライフが再現されている。


会社という枠の中での友情は、学生時代のそれとまた違った

親密感があって、かなり頷きながら読める。

 

ところで、みなさんは自分が死んだあと

誰にも見られたくないものってありますか?


日記なり手帳なりあると思うのですが、PCもその一つという方も
案外多いのではないかと思います。

 

この話では「もし自分が死んだらPCのハードディスクを壊す」ことを

共に約束する。
妻でも恋人でもなく、同僚に頼むという面白い設定です。
こちらの話はツンと来るしっとりとした良い話でした。

 

本書は芥川賞受賞作品とのこと。私、ノーチェックでした。
文庫本の方にはもう1作短編が入っているようですが、

私が読んだ文藝春秋の単行本は以上の2つの短編のみです。

 

ということで、すぐに読み終えてしまい「ああ、読んでしまった」と妙な
脱力感と何故か罪悪感。

ダイエット中に甘いものをこっそり食べてしまった後の
あの罪悪感です。

 

でも、このくらいの量でスパッと読み切れる感じも

また清々しいんですけどね。
中毒発作予防のため、買い置きしている「絲山作品」

…また補充しておかないとっ!

 

 

 

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世界中で迷子になって:角田光代

世界中で迷子になって:角田光代著のレビューです。

世界中で迷子になって

世界中で迷子になって

 

 

 

現地に幽体離脱しているな…という気配を感じる旅エッセイ

 

 

角田さんの今回のエッセイのテーマは「旅」と「モノ」についてで、
前半と後半に分かれています。

 

角田さんは「旅」をテーマにした話を書くのが本当に上手い

作家さんだと常々思っているのですが、それは角田さんご自身が旅人で、

旅の素晴らしさも怖さも知っているから。

 

さらに、自分の旅の弱点なども認め、それを包み隠さず

書き綴っているところに好感が持て、お友達の土産話を聞いている

感覚になるのです。

 

角田さんご自身、旅において自分はビビリであるとか、

荷物が少ないのはいいけど、臭くなるまでTシャツを着てしまい友達に

指摘されるとか、海に引かれた赤い線が本当にあると信じていたとか・・・。

 

落ち着いたしっかり者に見える角田さんの意外な一面が

見え隠れするのがとても面白い。

 

本書は旅好きなら、自分の旅の歴史を振り返りながら

確実に楽しめる内容だと思います。

 

特に若いころの旅と大人になった今の旅についてや、

最初に経験した旅の影響力など、自分の経験と照らし合わせながら、

共通点を見出すことがいつしか楽しくなり、また興味深く

読み進められます。

 

今回読んで思ったのは、角田さんは原稿に向かう瞬間から既に

仕事部屋ではなく、現地に幽体離脱しているな…という気配を

私は感じました。

 

PCの画面上でもしっかり「彼の地」を歩いている。
文字を打っているのでしょうけど、確実に見えているのは

風景なんだろうなぁーと。

 

そして角田さんの本自体が複写機になり、私たちに旅を

再現しているのかも?なんてことを思ってしまうほど、私たちも部屋に

居ながら「彼の地」へ導かれてしまうのです。

 

後半の「モノ」についてのエッセイで、「鍋」の話が出てきます。
お母様からもらった鍋について書かれたもので、ウルウルさせられる

話だったのですが、角田さんは至って冷静。

 

お母様の死を既にしっかり受け止め時が流れたんだなぁと

感じさせられた良い話でした。

 

エッセイはこうした作家さんの近況も含め、あの頃と今が比較できるし、
当時どんな気持ちで作品を書かれていたのかという「種明かし」のような

要素もあり、また違った角度から作品が見られるようになるという

読者にとってはもうひとつのお楽しみでもあります。

 

エッセイを欠かさず読む作家さんが私の中でも何人か居ます。
定期的に読むエッセイは、作家さんからの年賀状のようなもの。
ずっと会ってないけど元気なのか近況が聞ける場になっています。

 

 

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サロメ:原田マハ

本の紹介(女性作家は行)

サロメ原田マハ著のレビューです。

サロメ

サロメ

 

 

 

◆誰かが誰かを愛して、愛から憎しみが生まれて・・・

 

 

この小説を読んでいると、愛し愛され、追って追われ、憎んで憎まれ・・・
永遠に果てしなく続く、激しい感情との戦いに、

終わりはいつ訪れるのだろうか?と息苦しさと不安が

幾度となく押し寄せる。

 

サロメは気になっていた作品のひとつ。
いずれ読もうと思っていた作品の入口としてマハさんの小説は
間違いなく興味を増幅させられる内容だったと思います。

 

本書の「サロメ」は
オスカー・ワイルドと挿画を描いたオーブリー・ビアズリー
そしてオーブリーの姉であるメイベルを中心に、かつて
彼ら共に過ごした濃厚な時が描かれている。

 

体の弱いオーブリーは、母と姉と貧しい3人暮らし。
絵の才能はあるものの、貧しさゆえ美術学校にも行けず、
保険会社の職員として働く傍ら絵を描き続けていた。

 

その後様々な経緯を経て、オスカーに見い出され、
彼の絵は世に出ていくことになったのだが・・・。

 

とにかく結構な愛憎劇にあっという間に引き込まれてしまった。
当時の舞台事情や男色など知らなかった部分も多く、

サロメ」という作品がいかにセンセーショナルなものだったのか

ひしひしと伝わって来るものがあった。

 

登場人物はどの人々も見どころが多いが、特に女優であった

姉のメイベルの弟への愛情がちょっと怖いくらい変貌してゆくあたりも

ゾクゾクする。

 

ワイルド、その恋人のアルフレッド・ダグラス。
オーブリー、メイベル。
4人がぐるぐると狙った獲物を追いかけて回っているような人間模様。

 

この小説を読んだ上でオーブリーの絵を眺めてみると
やはり最初に見た印象と大きく変わり、怖さのなかのもの哀しさが
心を突いてくる。

 

オーブリーは結局25歳という若さで亡くなったが、
わたしにはなんだか彼が「サロメ」の絵を描くためだけに
この世に生まれ、急いで去って行ってように思えてならない。

 

名作と呼ばれる作品にはそれ以上に激しい裏舞台がある。
地の底から這いあがって来たような情念が大きな作品となって
私たちの前に現れて来たのではないかと・・・。

 

 

 

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