うずまきぐ~るぐる

本の紹介や日々のことをぐるぐるかきます

飢餓浄土:石井光太

 飢餓浄土:石井光太著のレビューです。

飢餓浄土 (河出文庫)

飢餓浄土 (河出文庫)

 

 

◆都市伝説と一括りできない何か

 

 

石井光太氏のノンフィクションは覚悟がいる内容のものが多く、

今回も自分なりにちょっとした気合いを入れて本を開いた。

 

とは言え、今回はちょっと様子が違う。

 

どの話も例により、色々な人々のところへ出向き

丁寧に取材されているのですが、「そのこと」についての

本当のところがはっきりと解明されるような類の話ではないということが

一番の違いのように思える。

 

本書は大まかに言ってしまうと「都市伝説」という言葉に

なるのかもしれないが、それにしては、あまりにもリアルな

証拠や証言が飛び出してくる。

 

もちろんその真相を知りたくなるのが人の常なわけだが、

色々なことを知るにつけ、

「いや、もうこれ以上の追究はしないほうがいい」という気持ちになる。

 

そんな引き際みたいなものを著者自身も感じているようで、

絶妙なところで話が終わる。

それゆえに、はっきり判るというより、ぼんやりしたままの話が

多いので白黒はっきりさせたい方には少々もどかしいかもしれません。

 

 

・[第一章]残留日本兵の亡霊

 敗残兵の森/幽霊船/死ぬことのない兵士たち/神隠し

・[第二章]性臭が放つ幻

 せんずり幻想/ボルネオ島の嬰児/あさき夢みし/胎児の寺

・[第三章]棄てられし者の嘆き

 奇形児の谷/横恋慕/魔女の里/けがれ/物乞い万華鏡

・[第四章]戦地に立ちこめる空言

 戦場のお守り/餌/歌う魚

 

これらは長い年月を経てもなおも人々の間で言い伝えられている

うわさ等で、その話は取材をすればするほど不思議なものであったり、

身震いするものであったりと片時もページから目が離せない話ばかり。

 

特に

50代の母とその娘が一緒に娼婦をしている話が私的には印象的でした。

この話も真相は闇の中でなんとも不可解なもの。

 

著者は実際この親子と対面しているのですが、その娘はお腹が大きく

妊娠中。・・とくれば、当然娘は女性のはずだが、町の人々に取材をすると

「あの親子はオカマ、お腹が大きいのは病気」だと言い張る。

つまり男性なのだと。

 

しかし、その後娘は出産したようで、赤ちゃんを抱いている姿を

著者は目撃する。しかも生まれたばかりのはずなのに、

赤ん坊はすでに1歳くらいの大きさだ。

もちろん娘のお腹はぺしゃんこになっていた。

 

著者は本当に娘が生んだのか失礼承知で娘の身体を見せて欲しい

と母親に頼む。

しかし、母親に憤慨され追い出されてしまったのだ。

 

再度町の人にこのことを話してみたけど、「男だ」と言うことには

変わりなく、「これ以上関わらないほうがいい」と言われ、著者は

町を去る。

 

「狐につままれた」というのはまさにこのこと。

実際自分の目で見た著者にとっては「??」以外の言葉は

浮かばなかったことでしょう。

 

貧困や戦争が生み出した得体の知れないものは、

時にグロテスクであり、時に幻のようなものであったりと、

様々な形で私たちを困惑させる。

 

また、その国の習慣を知らなかったばかりに・・・という

取り返しつかない失敗など、著者の体験を通して教えられることもあった。

 

石井さんの短編は初読みでしたが、短編なだけに短時間で

強いインパクトを残すものばかりでした。

 

ん~石井 光太さんのノンフィクションは骨太で胸に迫るものがある。

またまた今回も打ちのめされて読了です。

 

 

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毬子―吉屋信子少女小説選: 吉屋信子

毬子―吉屋信子少女小説選〈5〉 吉屋信子著のレビューです。

毬子―吉屋信子少女小説選〈5〉 (吉屋信子少女小説選 (5))
 

 

 

◆「袖振り合うも他生の縁」が、しみじみ感じられる少女小説

 

 


吉屋信子さんの「少女小説」にハマりつつあります。
何と言っても、どの本も装丁のレトロさに、読む前から

テンションが上がりっぱなしです。

 

ということで「毬子」。

吉屋さんの描く作品に登場する人々は、善良な人々が多い。
そして、主人公の少女は素直で健気。そんな中にちょっと悪い

オヤジなどが登場するのですが、こういう悪い奴は後々、

吉屋さんが上手くやっつけてくれるので、安心して読めるというのが

心の中のどこかにあるのです。

 

「毬子」は関東大震災で母親を失い、

そこから、様々な人々に育てられる少女の話です。


異人館のフランス女性エルザに育てられるのですが、

やがてエルザはフランスに帰国することに。

養子募集の際に現れた男はエルザを騙し、毬子を芸者屋に
売り飛ばそうとするが、毬子は自力で逃げ出します。

 

そこからは、心暖かい旅芸人の親子丼一座の人々の出会いがあったり、
やむを得ず見世物小屋の「人魚」となったりと

波乱万丈の生活を送ります。

 

良き人々の出会いや別れを繰り返すが、別れてもなおも「毬子」の

その後を皆は気にかけています。それもこれも、毬子が本当に優しく、

素直で良い子だからです。

 

見世物小屋の「人魚」になった毬子は読んでいて

いたたまれなかったけど、いつか大きな幸せを掴むための

前置きなんだという気配を感じながらラストへ繋がって行きます。

 

ラストに関してはちょっと出来すぎじゃないか?と思う方も

いるかもしれないけど、いえいえ、これくらい大袈裟に一気に

状況が変わるからこそ感動がひとしおなのではないか?

この時代の「少女小説」ならではの展開だと思うのです。

 

バタバタと色んなことがハッピーに片付いて、

最後に全員舞台に上がり、手を繋いで現れる感じです。

大きな歓声や拍手が聞こえてきそうです。


そして、悪者はもちろん、吉屋さんの手によって退治されます。

 

「袖振り合うも他生の縁」 
この本を読むと、しみじみこの意味が感じられるのです。

 

他人の世話などしている場合でない状況でも、

快く少女を引き受ける人々のその心意気がなによりも

印象に残った話でした。

 

 

 

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団地のはなし/横浜エトランゼ/物件探偵 【ショートレビュー①】

      <<<ショートレビューはじめます>>>

 

今月から読書メモ的にショートレビューの掲載もしていきます!

毎月レビューを書いたもの以外にも本は読んでいたのですが、

如何せん、書評を書くことが追いつかずにいました。

ショートレビューなら気軽に書けそうだなーということではじめてみます。

長文レビューと違ってごくごく短い感想になりますが、

どうぞよろしくお願いいたします。

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  1. 団地のはなし:山内マリコ他
  2. 横濱エトランゼ:大崎梢
  3. 物件探偵 :乾くるみ

 のレビューです!!

  

団地のはなし 彼女と団地の8つの物語

団地のはなし 彼女と団地の8つの物語

 

 

全体的な雰囲気はフリーペーパーのような感じで、

読み物あり、漫画あり、対談あり、写真あり。

団地に絞った話から、マンションでもアパートでもない団地の良さを

改めて感じさせられた一冊。老若男女がひとところに住むということは

意外にもメリットが多く、これからまた団地が復活してもいいのでは

ないかと思った。耐震性、老朽化さえクリアすれば、リノベーションして

どんどん活用すべき。

ジェーン・スーさんの団地計画のはなしは何度聞いても楽しく、

自分も住みたいなーと思わされる。

 

 

横濱エトランゼ

横濱エトランゼ

 

 

 横濱を舞台にした謎解き小説といった感じです。

 横濱の地理を知っているとより一層楽しめると思います。

恋愛と謎解きが同時進行しているわけですが、

どちらも不完全燃焼だったかな。

 

大きな山場もなく、無難にまとまっているので

個人的には後に何も残らなかったなぁという気持ちが残る。

 

 

物件探偵

物件探偵

 

 

 不動産に特化した6編の小説。

家を借りる人、家を貸す人、仲介する不動産。

不動産に関わる時「こんなこともあるのだよ」という事例集のよう。

一般的に言われている注意事項から一歩踏み込んだものが多く、

それ自体は興味深く読めました。

 

様々な問題点も、小説後半出てくる「不動尊子」という

宅建の資格を持つ女性が解決させる流れなのですが、

それが結構ワンパターンで、いてもいなくても....って

気がしないでもないが、ここが見せ場なのかしれません。

 

小説としては物足りなかったけど、物件のはなしは面白いので

物件の間取りなどを見るのが好きな人にはおすすめです。