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うずまきぐ~るぐる 

*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】降り積もる光の粒:角田光代 

 

 

 降り積もる光の粒;角田光代著のレビューです。

降り積もる光の粒 (文春文庫)

降り積もる光の粒 (文春文庫)

  • 作者:角田光代
  • 発売日: 2017/05/19
  • メディア: Kindle版
 

 

部屋に居ながらにして別の空間を思い出す

 

夕方、パソコンで作業をしながらテレビのニュースをなにげなくつけていた。
地元のニュースがひと段落すると、つぎは英語のニュースがほんのわずかな時間流れる。

 

たった5分くらいなのに、キュルキュルキュルキュルと脳内のテープが巻き戻され、わたしはあの時のホテルの一室で、夕食前の休息を取っている空間にひとっ飛びする。

 

一日がかりの移動、一日がかりの観光。
疲れた足をひきずりながら戻った宿で、思い切り靴を脱ぐ。
夕食までのひとときは、心地よい休息を与えてくれる。

 

言語のわからないテレビをつけっ放しにして、
夜が始まる道をせわしなく往来する人々をぼんやり眺めながら実感する。

 

「あーここは異国なんだ」

少しだけ手もちぶさたを感じでいるわたし。

 

この時間のわたしはきっとどこにも属さない。あるのは自由だけ。
あいかわらず、テレビからはヒステリックにまくしたてるよう早口にニュースを伝えているキャスターの声。高い天井にこだまする。

 

 

角田さんの降り積もる光の粒は、そんな一瞬一瞬のあの場面を思い出させてくれるエッセイ集。遠く離れたあの空間、あの時間、あの人々が、静かに本の中に浮かび上がって来る。

 

角田さんの旅の本は、もうひとつのわたしの旅の入り口なのだ。