12分の1の冒険 マリアンマローン著のレビューです。
不思議な鍵を拾ったことからはじまる冒険は・・・
シカゴ美術館には、実物の12分の1の大きさで作られた68部屋のミニチュアルームがあるそうだ。
本書最初のページにカラー写真が載っているのですが、その精密さや、当時の豪華な雰囲気に呑まれてしまい、時間があっという間に過ぎてしまうというちょっとした魔力を感じます。何度見てもしばらく時を忘れちゃうんだなぁ。
写真だけでもこんなにも惹きこまれるものがあるのだから、実物を見たら一体どうなるのか?どんなことが起きても不思議ではない。・・そんな考えを見事に物語にしてくれたのがこの本だと思う。それはそれは、勇気のいる冒険だけれども・・・・。
主人公ルーシーと大親友のジャック。
ジャックはちょっとしたいたずらから、このミニチュアルームの裏に忍び込み、そこで不思議な鍵を拾います。この鍵はミニチュアルームに入ることのできる不思議な鍵で、彼らはこれを利用して大きくなったり、小さくなったりしながら冒険を繰り広げていきます。
彼らが訪れたのは、パリの居間とアメリカのキッチン。そこから広がる世界は革命前のパリと魔女裁判がさかんに行われていたマサチューセッツ州の小さな村。
ルーシーたちはこのミニチュアルームに入ったことにより、当時の人々と出逢い、学校で習った歴史を肌で感じていくことになります。出逢った人々はその後どうなったのか?歴史上の出来ごとに巻き込まれて行ってしまったのか?
作者のミニチュアルームに対する愛着がいっぱい
二人はこの美術館に侵入し、知恵を出し合ったり、推理したりしながら一夜を過ごします。危なげなシーンが随所にあるので、ハラハラしながら常に目が離せない状況に。
誰でもこんな素敵なミニチュアルームを見たら、中に住む自分を想像するのではないかな・・・と思うのです。もし身長13センチになって忍び込めるとしたら、どんなことしようかな~?と。やはり私もルーシーと同じく、広い天蓋つきのベットでまず寝てみたい~って真っ先に考えちゃいました。
でも、小さくなるとゴキブリもハエもめちゃくちゃ怖い生き物だったり、小さい身体であちこち移動するのは本当に大変だとか、冒険であるがゆえの、危険と隣り合わせの世界もしっかり描写されています。
筆者のマリアン・マローンさんは、小さいころからシカゴ美術館に お母さんと一緒に通っていたそうです。 自分がミニチュアルームに居ることを想像しては、今でもドキドキされているとのこと。
だからかなぁ、本当にこの物語は書いている人がものすごく楽しんでいるなぁーと、ミニチュアルームに対する愛着が伝わって来るのです。好きで好きで、興味もたくさんあって、そんな様子がいつしか読者にも移ってわくわくさせられます。
歴史はちゃんと勉強しておいた方がいいな・・・そんなことも思わされた1冊。
いつか、ミニチュアルームの住人に会う日が来るかも知れないからね。
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