奇跡の人:原田マハ著のレビューです。
日本版ヘレン・ケラーって設定がすごい
日本版ヘレン・ケラーとのことで、一体どんなスト―リーになっているのか興味を持った作品。
時代は明治。
岩倉使節団の留学生として渡米した、去場安(さりば・あん)。
生まれつき弱視で、やがて失明するだろうと医者に言われていた女性。
彼女の父は安の将来を考えて、この留学で最高の教育を受けさせることにした。帰国後、伊藤博文から「盲目で、耳が聞こえず、口も利けない少女」の教育係にならないかという手紙が届く。
青森県弘前に住む介良(ケラ)貞彦男爵の娘・れん・6歳は、名家に生まれたにもかかわらず、暗い蔵に閉じ込められ、使用人たちに「けものの子」のように扱われているという劣悪な環境の中で生活をしていた。
去場安はそんな彼女の中に眠っている才能をどうにかして引き出そうと懸命に彼女の教育に力を入れるのだが、そこにはいくつもの難問が降りかかる。
噛みついたり、引っ掻いたりすることもある少女。兄の縁談にすら支障があったれんの存在は家族にとってお荷物であり、一族はその存在を隠そうとしていた。
時代背景が良く描かれていて、読んでも読んでもなかなか先に光が当たってこない展開なのだけど、それでも少しずつれんが変化してゆく様子から目が離せなくなる。
津軽地方の旅芸人の10歳の少女・キワと出会いは、れんと安にとって大きな転機となる。ラストでれんとキワの再会のシーンは胸に迫るものがあった。
名前にどうしても違和感が・・・
安とれんの長い長い道のり。
れんがその後どういう道を歩んだのかは是非、本書を読んでいただきたい。ヘレン・ケラーの日本版という発想はとても面白く設定も上手いなぁ・・・と感じずにはいられないのだが、どうして「去場安と介良れん」という名前にしなければならなかったのか?と最後まで思っていました。
とくに「去場安」という表記を見るたびに「夜露死苦【よろしく】」的なヤンキーなものを連想してしまった。ユーモアを交えたつもりなのかもしれないけど、普通の名前になさった方が、違和感なく読めたのになぁ・・・と、終始感じてしまったのが残念。