ソボちゃん: いちばん好きな人のこと:有吉玉青著のレビューです。
感想・あらすじ ソボちゃん、なんて愛おしい響きなんだろう
「ソボちゃん いちばん好きな人のこと」
タイトル通り、本当に本当に好きだったのだなぁ・・・と感じさせられるエピソードがたくさん登場する。
たくさんありすぎて、この本の中に納まり切れない「愛情」が今にも溢れ出しそう。それはそれは愛情に満ちている本なのです。
「ソボちゃん」 ──玉青さんはおばあちゃんのことをこう呼んでいる。作家・有吉佐和子さんの娘、玉青さんは両親が離婚しているため、母親とおばあちゃんとの3人暮らしだった。
作家として花開いた母親が多忙だったため、玉青さんのそばにはいつもソボちゃんが居て、どんなときにも大きな愛情で彼女を包み込み、見守っていてくれた存在だった。
戦前は銀行員の祖父が赴任したインドネシアのジャカルタ)で暮らしたこともあり、昔の人とは思えないほど、進歩的な考えのソボちゃん。有吉佐和子さんの小説を読むといつも「進歩的な人」と感じるのだけど、その源はソボちゃんにあったのだという発見がとても嬉しく思える。
本書冒頭の章では、ソボちゃんがかつて住んでいたインドネシアに玉青さんが訪ね、忘れていた思い出の数々を振り返りながら旅をします。
花と果物に囲まれ、テニスと煙草とホットケーキに彩られたソボちゃんの外国生活。当時の様子がふわ~と浮かびあがるような話です。
喜怒哀楽の激しい母親であった佐和子さんもまた、ソボちゃんの深い愛情に見守られていたからこそ作家活動を続けて行けたのだということが様々なエピソードから伺える。
実質、ソボちゃんは佐和子さんの秘書と言っていいほど、陰で支えていた人なのだ。
敵わないなぁ・・・と思うほど母性溢れる素敵な女性。和歌山弁も妙に格好いい。ソボちゃんの魅力はたくさんありすぎる。読んでゆくごとに私もそのソボちゃんの魅力にやられてしまう。
「一番好きで、一番尊敬する人」。
大きくなってもずっと一緒に寝ていたというくらい、玉青さんにとって離れがたい存在だったのでしょう。
一枚の写真から感じさせられる豊かな愛情
それにしても、女3人、それぞれの個性と役割をもって凛として生活していた有吉家の人々はパワフルだ。正三角形ではなかったかもしれないけど、いろんな状況に合わせてバランスを取り合いやって来た様子が窺える。
さて、最後のページの3人の写真を見逃さないでほしい。玉青さんの存在が二人にとってどれだけ大切な存在なのか、お二人の表情にぜひ注目していただきたい。玉青さんの将来が愛情で満たされることが約束されているかのようだ。そしてそれは、読者までも温かい気持ちに包まれてしまう1枚なのだ。