読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

うずまきぐ~るぐる

本の紹介や日々のことをぐるぐるかきます

サラバ!:西加奈子

 サラバ!:西加奈子著の上下巻のレビューです。

サラバ! 上

サラバ! 上

 

 10周年目の作品から見える意気込み

 

小説家として10年目を迎えた西さんの作品「サラバ!」は、
ひとりの男性が生まれたその瞬間から37歳までの
半生を描き上げている。

「あんたはな、左足から出てきたんやで」
「それから、ゆっくり右足を出したんやで」

生まれたシーンって言えば「おんぎゃ!」が普通だけど、
足の描写から入る西さんのセンスに早くもやられながら、
私たちはこの「圷歩」という一人の男をズームアップし、
これから起こる様々な人生の荒波に一緒に飲み込まれてゆくのだ。

1977年に生まれた歩。父の仕事の関係でイランに生まれ、
小学生になるころには、エジプトへ移り住む。
やがて両親の離婚とともに、大阪へと舞台も次々に変化する。

登場人物のユニークさって言ったらもう西さんのお家芸としか
言いようがない。上下巻ともなると、その面白さをいちいち
書いていられないので割愛するけど、特に注目すべきは、
歩の姉のキテレツさだ。幼少の頃からの変わり者で「ご神木」なんて
呼ばれていた姉。行動がとにかく不気味なのだけど、上下巻での
変貌ぶりが一番際立つ。

そして、こぎれいな母の浮き沈みや、父親の過去と今後…等々、
読めば読むほどいろんな出来事が巻き起こり、まさに人生そのもの。

上巻は海外、そして学校生活などが中心ですが、
下巻は家族離散後を描いたもので、家族みんなの浮き沈みが激しく
少々しんどい。特に歩が恋人や友人たちとどんどん溝を深めてしまう
あたりがピークだった。なんというか、あっちも、こっちもシャットアウトされ、
八方塞がりになってゆく様が、心配で不安になる。

「あなたが信じるものを、

誰かに決めさせてはいけないわ」

姉のおせっかいな言葉からまた歩き始めた歩。
歩が苦しんで、苦しんで、ようやくたどり着いた先には・・・。

 

これからもその感性を私たちに見せつけて欲しい

 

長かった。
けど西さんがこの小説にかける想いがメチャクチャ伝わって来た。
途中まではどこに転がって行くのか漠然としていたけれど、徐々に形になっていったような気がします。
それはいつしか西さんの作家活動の道のりと重なったようにも

思えます。

本書はいくつか西さんの作品を読んだ上で読むと
さらに西さんの意気込みが感じられると思う。
今までのいろんな作品のオールスターたちが凝縮されているような、
そんなものが実感できるのではないでしょうか。

それにしても小説家ってすごいなぁーと改めて思う。
モデルとなる人物が明確ならまだしも、まったくこの世にいない

人物を小説の中でつくり上げて行くということがどのぐらい

大変なことか。何もなかったところから、みるみる人格が

形成されて大人になってゆく。
「歩」はまさに西さんが生み、育てたとしか言いようがない。

言葉のセンス、物の感じ方のユニークさ、
どこをとってもまるごと西加奈子

これからも感性を思い切り私たちに見せつけて、
ずっとそのまま突き進んでほしい!

私にとって西さんの小説は「がっきゅーうんこ」だ。
口の端をひっぱって・・・どうなるのか知っているのに
何度もやってみたくなるあれ。何度も笑っちゃうあれ。

知っているよ、面白いのは!と分かっている上で読む物語。
読めばあの楽しさが約束されている。笑いが約束されている。

そんな小説に出合いたくて、明日も読みたい作家さんのひとりです。
10周年、おめでとうございます!そして、直木賞も!!

 

サラバ! 下

サラバ! 下