読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

うずまきぐ~るぐる

本の紹介や日々のことをぐるぐるかきます

賢者の愛:山田詠美

賢者の愛:山田詠美著のレビューです。

賢者の愛

賢者の愛

 

谷崎潤一郎の『痴人の愛』と山田詠美の『賢者の愛』

 

山田詠美さんが、文豪・谷崎潤一郎の『痴人の愛』に挑んだ最新作

─────ということを後に知ったのですが、『痴人の愛』を

読んでいないので、山田さんがどう挑んだのか、解らない自分が

イマイチで悔やまれる。

 

とは言え、谷崎の作品をたとえ知らなくても、私的には
傍観者的な面白さがあり読み進めるごとにこの作品の
奥深さを知ることになった。

 

最初はうんと年下の男性を自分の好みに育てた中年女性の話だと
思っていたのです。20歳以上も年の差のある男に、自分への憧れを
ずっと持たせることなんかできるのだろうか?

 

「ふっ、ふ~ん、小説、小説!」と、侮っていたのですが、
いや、これはどうもそれだけじゃない、という不穏な雰囲気が
あっという間に広まってゆき、気づけばすごい愛憎劇に
飲み込まれてしまった。

 

人間模様が・・・それはもう・・・
親友、初恋の人、父親がぐにゃぐにゃ入り組んでいて、
人の「念」のようのものが蠢いている。
(いや、ホラーではないんだけど)

 

親友である百合は裕福であることがその惨めさを

強調してしまう稀な娘。

裕福であることがよりいっそう彼女の哀しさを

引き立てるという幸薄感。

 

そんな彼女に大好きな父親や、好きな人をスルッと
奪われてしまう真由子。百合は真由子にとって、

一番身近な存在であり、自分の幸せを絡め取ってゆく

存在でもあるというなんとも歪んだ関係なのだ。

 

真由子の幸せな時ほどその幸せな部分を吸い取ってゆく

百合の不気味さったら。

 

やがて百合は真由子の好きな人と結婚し、息子「直巳」を生む。
その子供と言うのが、後の年下の真由子の男なのだ。
親友の息子・直巳を小さいころから可愛がり、自分好みに

してゆく真由子。

 

直巳が向ける真由子への純情。
その反面、百合、真由子らのドロドロした黒い感情。
人々の感情がジグザグと交差しながら、読者は行方の
見えない世界に翻弄されてしまう。

 

結末の意外性とその過程に蠢くもの

 

ただ単に憎き女性の息子を自分好みに育て、復讐するという
女の話だけでは収まらないものがある。

もっと深い。

ゆえに、次々に明らかになる事実に
「うわっ」となることはラストまで続いていく。

 

本作、結末の意外性もあるけど、私的にはその過程に

蠢いているものに、ものすごく引き込まれてしまった。

 

・・・ということで、『痴人の愛』が、無性に気になってしまう。
痴人の愛』と『賢者の愛』、この間には何が横たわって

いるのだろうか?

 

これを確認しないと本書を読み終えた気がしない。
やめてーー、こういうことするの!山田さん!(笑)