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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【感想・あらすじ・レビュー】神さまたちの遊ぶ庭:宮下奈都

 

 

 神さまたちの遊ぶ庭:宮下奈都著のレビューです。

神さまたちの遊ぶ庭 (光文社文庫)

神さまたちの遊ぶ庭 (光文社文庫)

 

 

感想・あらすじ 宮下家一家5人が繰り広げる新生活とは

 

 本を読み終えてから北海道の「トムラウシ」を地図で見てみる。

地図を縮小してゆくと、北海道のド真ん中!
そうかそうか、宮下家は北海道の真ん中で、夢のような時間を過ごしていたのだなぁ・・・と、広大な地図の一点を見つめながらあれこれを振り返っていた。

 

本書は福井からトムラウシに移り住んだ宮下家の体験を宮下さんが日記形式でその一年を綴る。

 

受験を控えている長男君。
「漆黒の翼」「英国紳士」「ボギー」と呼び名がコロコロ変わる次男君。
謎で不思議な発言が多い娘ちゃん。
北海道愛が誰よりも強い旦那さん。
そして、作家の宮下さん。

宮下家一家5人が繰り広げる新生活。
何もかもが初めての北国の生活。宮下さんが初めて体験する数々のことは私自身もまた、知らないことばかりで、読んでいてこれがものすごく新鮮でありいくつもの発見があり、勉強になる部分が多かった。

 

何故、この時期に、この地を選んで住むことになったのか?
ご夫婦の会話のやり取りからも、何か強い目的があったという感じではない。「住んでみたい・・・」というご主人の希望を、家族全員がなんとなく面白そうという感じのみであっさり決めてしまう。

 

だから読者である私も、なんとなく引っ越しの車に便乗させてもらい、気づいたらあっという間に1年が過ぎていた・・・という感じであった。

 

素晴らしい景色に恵まれた土地で過ごす毎日。
その昔、診療所だった建物に住むご一家。お化けが出ると心配したり、どこにでも感じる動物の気配、新しい感動に出合う日々。

 

また少人数学級での生活は、生徒も先生も一日一日を大切に過ごしているなぁーという印象が強く、結び付きも強い。その上、行事も多く、家族総出、町内総出で行うという一体感はちょっと都会にはない部分でもあり、戸惑いもあっただろうけど、ここでのわずかな時間に築いた人間関係は、最終的にはものすごい「宝」となって宮下さん一家の心に残る。

 

 

 

読者へにも届くキラキラした1年はまるで贈り物

たった一年。
最終的に福井に帰る決断をする一家。
帰る日が近づくにつれ、ご主人の機嫌がどんどん悪くなる。そんな様子から、この地から去ることがどんなにつらかったのかが読み取れる。みんなとの別れのシーンは、まるで私も山村留学を終えたような気分になり、しみじみ目頭も熱くなる。

 

実話なのだけど、どこか夢の中の話であったかのような読後感。
自然、家族、学校、行事、人々・・・・濃密な時間は読み終えた今が一番キラキラして見える。心が少し豊かになった。きっとこの本にも見えないエネルギーが宿っているんだろう。

 

最後に、私は宮下さんちの娘ちゃんの不思議な発言に釘付けであった。宮下さんを困惑させる発言の数々。このユニークな娘ちゃんの将来がとても楽しみだなぁーと、早くもお隣さん気分で気になっている。

宮下奈都プロフィール

1967(昭和42)年福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒。2004(平成16)年、「静かな雨」が文學界新人賞佳作に入選。2007年に発表された長編『スコーレNo.4』が話題となる。瑞々しい感性と綿密な心理描写で、最も注目される新鋭のひとり。著書に『よろこびの歌』『太陽のパスタ、豆のスープ』『田舎の紳士服店のモデルの妻』『メロディ・フェア』『誰かが足りない』などがある。

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