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夏の朝:本田昌子

 夏の朝:本田昌子著のレビューです。

夏の朝 (福音館創作童話シリーズ)

夏の朝 (福音館創作童話シリーズ)

 

 

蓮の花が咲く瞬間に何かが起こる!?

 

蓮はお墓参りの時にお寺の池でよく見ているけれど、
蓮の花って見たことがあったかな~。
確かに知っているけど、肉眼で見たかと言われると自信がない。

で、この本に出てくる不思議な蓮の花に誘われて調べてみたら、
「蓮の花」って4日間しか咲かないのですってね。

しかも、花の最適な観賞時間は、朝7時~9時頃までなんだそう。
午後には見られないのですねぇ。

だからこの物語の主人公も早起きして、蓮の花が咲くところを
観察していたのだ。

主人公・莉子は中学2年生。祖父の法事で母の実家へやって来ます。
住む人が居なくなってしまった家は、間もなく取り壊される

予定です。なので、法事が終わると亡くなった母の姉妹が

家の片づけをすることになっています。

莉子はおばさんの手伝いということで、そのまま残り、
数日間を過ごします。そこで体験する不思議なこととは・・・・。

きっかけは法事に来ていた小夜子おばさんの話。
蓮の花のふっくらしたつぼみの中には「想い」が詰まっている

という。
その想いがつぼみに溜まって、開花とともに再び空へ放たれる。
花が咲くとき「ぽん」という音を鳴らしながら何度も繰り返されると。想いを受け取ってくれる人が現れるまで・・・。

莉子は本当なのかさっそく早朝から蓮の観察をします。
そして驚いたことに、蓮の花の香りを嗅ぐたびに、
過去の時代にタイムスリップします。

彼女が目にするのは、若き日の母親の家族。
会ったことのないおばあちゃん。
今、この家で片づけを一緒にしているおばさんたち。
そして亡くなったおじいちゃん、お母さん。

最初はおじいちゃんとの会話が意味不明で戸惑うのだが、
やがて状況が解って来ると、自分も母の姉妹のように
楽しい時を一緒に過ごすことになる。

 

どこまでも過去を遡ってゆくと・・・

 

この話のさらに面白いところは、数回同じ現象で
タイムスリップするのですが、数を追うごとに、
さらに過去へ過去へと遡る。
しまいには、おじいちゃんの少年時代へまで・・・。

莉子は現実に戻って来ては答え合わせをするように、
過去で見て来た風景や出来事をおばさんに話し、
少しずつ母の家族のことを知って行く。

母親たちの娘時代の生活の中に自分が入り込むことへの戸惑い、
知りたいような、複雑なような・・・。でも知りたいことも

山ほど出てくる。

・・・・というのが大まかな筋なのですが、
亡くなった身近な人たちときちんとお別れする、思い出の詰まった
家とお別れする、ということは、こうやって確かに存在したという

形跡を辿りながら死者の想いを感じながら気持ちを少しずつ

静めて行く。生きている者にとっても死者にとっても

このような時間は大切なんだなーと改めて思う。

蓮の花はそんな互いの「想い」を放っては、

人々に届けているのかもしれない。

たまたま図書館の児童書のコーナーで目にとまった作品でした。
本田さんははじめて読む作家さんですが、とても読みやすく、
スーッと物語の世界へ引き込んでくれる心地よい文章が魅力的です。

ちっちゃな切なさと、ほんのりしたぬくもりが残るような読後感。
他作品も読んでみたいと思います。

ところで、蓮の実って美味しいのでしょうか?
蓮の実ご飯、食べたことないなぁ・・・・。


※挿絵も素敵でした。