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小説・捨てていく話:松谷みよ子

 小説・捨てていく話:松谷みよ子著のレビューです。

小説・捨てていく話

小説・捨てていく話

 

 

松谷みよ子さんを偲んで・・・

 

昨年後半に、少しずつ読み続けた「モモちゃん」シリーズ。
全てを読み終えたあと、この本は絶対読もうと決めていた。
読み終えて書評の下書きをしたまま時は過ぎ、
今月、松谷さんの訃報を知り、なんとも言えない気持ちになった。

けれどご存命中に「モモちゃん」シリーズを再読できたこと、
何の意味もないかも知れないけど良かったなぁと思う。

松谷さんの作品はまだまだ私には読むべき本がたくさんあります。
これからはその一冊、一冊、丁寧に読んで行こうと思っています。

さて、本書について・・・
タイトルからしてちょっと寒々とした雰囲気です。
あの話も、この話も、気づくと「あー、モモちゃんだ!」

というほど、物語のベースになっている出来事が多いこと。
実話ということでより強くキリキリと胸をつつかれるような
痛みが伝わって来る。

松谷さんの結婚生活は残念ながら離婚という形になってしまうのだが、離婚後も彼の親族との付き合いや仕事などで繋がっている

部分が多い。

また、経済的に苦しかった元夫へお金を工面してあげたり、
逆に、彼の海外での仕事に付き添ったりと、なかなか普通では
理解しがたい関係ではあるのだけれど、ひとつひとつの出来事を
読んでいくうちに、それも「家族」のひとつの形なのかもしれない
という気持ちになる。

ご夫婦を見ていると、もう一回やり直せないものかと
思ってしまうわけだが、人の感情はそう簡単なものではない

ということが、言葉じゃなく体感的に感じ取れてしまうほど、

松谷さんの気持ちが私のなかでくるくる渦を巻いてゆく。

そして「離婚」、「元夫の死」によって見えてくるものは、
夫婦の苦しみだけではなく、二人の娘さんにも同じ分訪れるのだ。

パパの死によって「涙の塩」を作るほど泣く上の娘さん。
反対に涙を流さなかった下の娘さん。

「どうしてあの子は泣かなかったのだろう?」と姑は松谷さんに
つぶやくのだが、母親である松谷さんは下の子の悲しみや孤独を
理解しているのです。

離婚ということによって受ける家族の傷は大人も子供も
同じだったということが、このシーンで痛いほど伝わってきます。

今では離婚も珍しいことでもなく、離婚を取り上げている本も
たくさんあるけれど、ん~こんなにも深い闇の中に落とされたような
内容のものは初めて読んだ気がします。

決して特別な話ではないのだけど、深くて重い何かが
ずーっと横たわっていました。

 

───申しおくれましたが私は三歳年上の姉さん女房でした。 ────

 

13回忌をすぎ、夫に対して捨てきれなかったもの。
それはどんな愛だったのか。

「戦友愛」とも「同士愛」とも松谷さんは言う。

表題の「捨てていく」の中に「捨てきれなかった」ものがあったのだと、ラストの一文で知った時、なんともいえない安堵のため息が

漏れてしまった。