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異邦人(いりびと):原田マハ

 異邦人(いりびと):原田マハ著のレビューです。

異邦人(いりびと)

異邦人(いりびと)

 

 

マハさんの描く京都にも注目

 

表紙からどっぷりアート系小説と思っていたのですが、
読み終わってから感じたのは、人間ドラマと言った印象が強い。

たかむら画廊の専務・篁一輝は、有吉美術館の
副館長・菜穂と結婚をし、まもなく子供が誕生するといった時に、
3.11の地震が起こる。

放射能の被害を回避するため、妊婦の菜穂はしばらくの間、
京都に滞在することになるのだが、この別居生活が両家の
家族に影を落とすことになる。

毎日退屈な生活を送っていた菜穂はやがて京都の画廊で
一枚の絵に出合う。
菜穂は昔から美術を見極めるセンスが人並み以上で、
彼女が選ぶ絵画は、必ずのちに高い評価を得る。

そんな彼女が一目惚れしてしまった一枚の絵。
それは、白根樹(たつる)という、まだ世に出ていない、
名も知られてない女性のものであった。

やがて、菜穂と彼女は対面しどんどん距離が縮まるのだが、
樹には複雑な事情があることが判ってくる。

それと同時に東京に居る菜穂の家族、夫の家族、両家ともに
家業の状態が悪化してゆく。
菜穂と一輝の夫婦関係も、少しずつひびが入ってゆく。

かなり細かい章に分かれていて、章が終わり次の章に入る感じが、
映画的とでも言おうか、パッと切り替わる感じが独特な
リズムを作っている。

舞台が東京と京都、どちらも気の抜けない展開になっている中に、
京都の祇園祭中の屏風祭など、風情漂うシーンも多く心が和む。
マハさんの描く京都はこういう感じになるんですねぇ。

登場人物たちは、ん~どの人物も自分自分って
感じで好きになれない。

菜穂は我儘娘だし、一輝は優柔で情けない。
強烈なのは菜穂の母。なんだかな~な人なのだ。
菜穂の才能を見抜いていた、目利きなお祖父さん。
このお祖父さんが小説の大きな「鍵」を握る。

 

アート小説とそれ以外の小説、ふたつの作風が合わさった作品

 

マハさんの作品はアート系とそれ以外、作風がきっぱりと
分れているように私には感じられていたのだが、この作品は
良い意味でふたつの作風が合わさっていたように思える。
(「新境地の衝撃作」というコピー、それほどではないと思うが。)

アート系作品のようなじんわり来るような
満足感まではいかなかったが、それでも最後まで
どうなるのかという話の展開の面白さがあり良かった。
とにかく読み始めるとあっという間だったのは
全作共通するものがある。

また、画廊や美術館の繋がりなど、見えないルールや取引など
知らなかった世界を少しずつ開いてくれるのも
マハさんの小説ならでは。

そうそう、装丁の絵は、小説を読み終えてから
じっくり見ることをおすすめいたします。

ところで、「異邦人」、このタイトルを見て、あの荘大な音楽を
思い出した方もきっと多いだろう・・・自分がそうであったので、
貴方もきっと・・・と思いたい(笑)

しかし本作は「異邦人」と書いて「いりびと」。
念を押しておきたいと思う。

 

 

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