千日のマリア:小池真理子著のレビューです。
曇り空から土砂降りになってゆくような小説
8つのはなしの短編集。
(そろそろ小池さんの濃厚な長編も読みたいところだが・・・・)
どの話もずっと曇り空をみているような感じであった。
やがてそれが土砂降りになっていくような暗いトーンの話だ。
1つ1つ読み進めるうちに、これはもう明るい話は
出てこないのだろうと、それならそれで覚悟を決めて
読み進めようという気持ちに。
なかでも表題作の「千日のマリア」は、とても印象的な話だ。
義母が起こした交通事故で、人生を台無しにされた男性。
数年後、義母の葬式で、彼は過去の義母の姿を回想する。
義母の献身的な姿、やるせない感情。
新しい命の誕生によって変化する家族。
この話の登場人物、どの人をとっても痛々しい。
義母が献身的になればなるほど、なんとも複雑な
気持ちになってしまうのだけれど、どこか艶っぽく、
生々しさを感じてしまう雰囲気も。
読めば読むほど違った感想が出て来そう
毎晩1話1話、読んでいった。
果たして自分はこの本の深い部分まで読みこめたのだろうか?
短編とは言え、探っていけばいくらでも何かが見えて来そうな気がする。
それだけ「生」と「死」があちこちに潜んでいる作品だと感じた。
本書は小池さんが2006年から2015年に書いたものだそうです。
だからこそ、もう少し時間をかけて丁寧に読むべきだったかなー
と、今になって思う。
読めばよむほどまた違った感想が出てきそうな気がしてならない。