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うずまきぐ~るぐる

本の紹介や日々のことをぐるぐるかきます

台所太平記:谷崎潤一郎

 台所太平記谷崎潤一郎著のレビューです。

台所太平記 (中公文庫)

台所太平記 (中公文庫)

 

 

入れ代り立ち代り、女中さんがやって来る

 

女中さんが何人登場したのだろうか?
途中から、誰が誰だか区別がつかなくなっているほど、
女中が続々と登場する。

作家の「千倉磊吉」は、谷崎自身なのだろう。
また、登場人物は谷崎家の「あの人だー」と、思い当たる部分が

多く、住んでいる場所も京都、伊豆、これまた谷崎の住まいと

一致する。
というわけで、またまた谷崎氏の顔を思い浮かべながらの読書です。

女中さんと言えば、その労働の過酷さや、主人との相性によっては
かなり暗い話になりがちだが、ここの女中さんたちの生活ぶりは
かなり自由に見え、仕事が手につかなくなるほど恋をしちゃう
なんて余裕もある。女中界の中でもかなり恵まれて
いたんじゃないかと思う。

磊吉とデートみたいに買い物に出かけるシーンなんかもあったりして、わたしのイメージしていた女中像とだいぶ違う。
主人と女中の距離が近い。

確かイギリスのメイドもそうだったけど、階級の上の家庭ほど
働きやすいといった感じだったが、千倉家もまた裕福だったから
出来たことも多いだろう。女中たちの食生活ひとつとっても、
一般的な女中食とはかなり違うんじゃないかと思われる。

女中というよりむしろ娘とか孫の感覚で教育されている感じに近い。
夫婦も嫁入り前の大事な娘さんとして扱い、責任をもって預かっている様子が方々から伺える。嫁の口まで世話すなんて、

もう親心そのものだ。

面白かったのは、間もなく結婚する女中に、初夜の手ほどきを
春画を用いてレクチャーする奥さん。
実の親の役目のようなことまでするあたりが微笑ましくもある。

 

変な人々はやはり登場する

 

本作は今まで読んだ作品の中で、一番安定した読み心地だったように
思える。とは言え・・・

女中部屋であられもない姿態で寝ている女中たちに圧倒され、
写真を撮りまくるたまたま家に遊びに来たアンタモスキネェの

青年とか、ある二人の女中が同性愛者であったり、

恋にうつつを抜かしている
女中がいたりと、やっぱり登場人物たちは谷崎作品ならでは
ユニークさがある。

そしてなんと言っても、主人の「脚フェチ」を醸し出すシーン。
忘れたころに「脚」の描写を挟んでくるあたり、
本当に好きなんだろうなぁ~と、苦笑してしまう。

全体的にはドタバタ問題が起きて賑やかであるが、
そんななかでも終始磊吉の「じっとりした視線」で女中

観察している。
そんなモゾモゾした独特な雰囲気も、慣れてしまえば
何てこともない(笑)

終わり方も舞台のラストシーンを見ているみたいで後味も良い。

さて、次は何を読もうか。これはこれで満足したが、
もっと濃いのを求めている自分もいる。
(いよいよ変態に対する感覚が麻痺してきた模様)