遠野物語remix: 京極夏彦,柳田國男著のレビューです。
土地に根付いた話が、人の意識の中にも根付いている
遠野界隈を旅行したときに気分を盛り上げる意味でも柳田氏の本は持って行ったのだけれど、2-3ページ読んだきり。小難しかったのか、本を読む時間がなかったのか思い出せない。本はどこかへ行ってしまってみつからない。
それでも・・・・
遠野=不思議なことが起こる場所、という図式が頭の中にあり、遠野と柳田という名前を聞く都度、胸にザワザワと湧きたつものがある。
本書は京極夏彦氏の「新釈:遠野物語」とのこと。どの話も非常に短いのだけれども、短いのが逆に様々な余韻を残してしまうのか、ゾワゾワが後から押し寄せる。
─────河童は、人を孕ませる。
もう、この短文だけで、不気味さが・・・。
────生まれた赤ん坊の手には水掻きがあった。
ひっ・・・・しかも、
────この娘の母もまた、若い頃に河童の子供を
産んだことがある。
すごいなぁ、間男が河童であるという噂・・・・。
五十五番の話、たった3ページなのに、不気味さが詰まっている。
座敷童衆の話もいくつか登場する。その中の一つから感じたのは、「ああ、こういう現象もここでは自然な出来事なんだなぁ」と。誰もいない家にお母さんがひとりきりで居たときの出来事なのですが・・・。
隣の部屋から鼻を鳴らす音が聞こえてきた。
意を決して坂戸を開けてみたけど、誰もいないのである。
ああ、座敷童衆だなと思った。
普通だったらねぇ、こんな風に思えないですよね。原因突き止めようと躍起になったり、怖くてひたすら怯えてしまいそう。「座敷童衆」が自分の家に来るなんてこと自体、頭のなかにないですもの。
土地に根付いた話が、人の意識の中にも根付いているんだなぁーということをしみじみ感じてしまった話であった。
日頃から怖い本は読み慣れているので、強烈な怖さは感じなかったけれど、山や川や土に・・・深く深く沁みこんでいる「なにか」を感じずにはいられない。
いずれは柳田氏の方も読んでみたい。遠野物語をざっくり知るのによいきっかけになった1冊であった。
余談だが「河童の面は真っ赤である」って・・・緑から赤へイメージをチェンジさせるってもうムリ!!「河童巻き」が赤だったら・・・それこそホラーだ。(え、そこ?)