銀座ウエストのひみつ:木村衣有子著のレビューです。
社是「真摯」 ─── 気まじめ どこまでも 気まじめ
こういうお店が残っていることに心底喜びを覚え、
そしてますます銀座ウエストに愛着を感じた1冊。
本当にこの本を読んで良かった!
銀座ウエストと言えば乃木坂に勤めていた友だちが集まるときはいつもウエストのシュークリームを買って来てくれていたことを思い出す。食べながらしゃべり明かした週末。
ウエストのお菓子をお土産でいただいたという人はかなり多いのではないかと思う。
葉っぱの形をしたリーフパイや、赤いジャムがのっているクッキーは、ウエストを代表するお菓子ですが、リーフパイが全て手作りだったということはこの本を読んで初めて知った。
このパイは山梨の一宮工場で、ひとりひとりの職人さんが、自分たちのプロセスで作り上げると言う。だから出来上がったものはきっちり均一ではない。
同じ作業でも、バターの積み方、手の動かし方、道具の持ち方などバラバラだが目指す所は一緒。結果が一緒なら良しとするそうだ。
マニュアル化されている工場が多い中、この話はかなり新鮮だ。
そして材料はシンプルなものを使用。
青い空に「ウエスト」「リーフパイ」と書かれたアドバルーンが上がるこの工場には50名が製造に関わっている。賄いの食事までウエストには哲学があり、ただただ素晴らしいという言葉しか出てこない。
どのページからも、ウエストの美学がちりばめられていて、あー、これも書いておきたい、あれも書きたいと抜粋したくなる言葉だらけで、文字を打つ指が浮ついてしまう。
それは、
喫茶店のテーブルクロス1枚から感じ取れるこだわりであったり、
お客様からの声であったり、
社員の心得や愛社精神であったり、
先代の残した数々の教えや言葉であったり、
そして、大切に丁寧に刻んで来た歴史であったり。
最近、材料費の値上がりにともない企業も相当苦労をしている。
分っちゃいるけれど、値段を上げずに内容量を減らして販売するものが多くなり、それに気づいた時の怒りのようなやるせなさを感じる機会が多くなった。
そんな中、ウエストの方針はこうだ。
ちょこちょこ品質を落として、無理に価格を維持するよりも、正直に、かかった原価に正当な利益を加えて値段を付けろ。(中略)
うちは3000円とか、5000円とか、ジャストプライスの商品が少ないんです。内容を減らして、ジャストサイズ、ジャストプライスに無理矢理持っていく、そういうことはお客さまをごまかしていることになるから、絶対やっちゃいかん、と言われていまして。そのまま半端な値段でやってます。
先代が言った言葉だそうだ。
なかなか難しいことかもしれないが、この頑固な一面はたとえ時代に逆行していようと、今後も守り抜いて欲しい。こんな世の中だからこそ。
銀座ウエストのことを知った今、私が感じたのは「温故知新」。
青山ガーデンの喫茶室を見るとまさにこの言葉が現実となっていると思う。
リーフパイの葉のすじ1本1本の違いを堪能して味わいたい。
・・・と、思っていた矢先に、復刻版、パウンドケーキが限定で発売!
さっそく予約を入れに走ったのは言うまでもない(笑)
復刻版パウンドケーキ!素朴な懐かしい風味に顔がほころぶ。