おとな小学生:益田ミリ著のレビューです。
感想 こどものわたしに出会う本
子供の時に読んだ本を、図書館とか古本屋さんで見かけたときのあのこそばゆい感じのうれしさ。そうそう、こんな絵だった!ああ、ここからどうなるんだっけ?1ページでも中を開いてしまうと途端に本を読んだあのころの空気が流れ込んでくる。
本書はミリさんがこどもだった自分に会いにゆく本とでも言おうか。
幼少期に読んだ思い出の本とともに、当時あった出来事や感じたことなどを綴ったもので、その本を読んでいなくても共感する話が多い。
アーノルド・ローベルの「ふたりはともだち」にまつわる、ミリさんのほろ苦い思い出はなにか心がキューっとくるものがある。
今では名前も思い出せない友達が、ミリさんにすすめた一冊の絵本。しぶい色調で薄気味悪く、ぜんぜんおもしろそうじゃないと感じたミリさん。放り出したままにしていた本に、お茶をこぼしてしまう。ミリさんは翌日本をもって行かず、お茶をこぼしたことをその子に伝えると、もう持ってこなくてもいいよと言ってくれたそうだ。
30年ぶりにミリさんはこの本を買い、はじめて読んでみる。そして内容を知ったミリさんは、今頃になって切ない気持ちになるという。
子供の自分から大人の自分へ問うてみる
本を通して何十年もあとに気づかされることもある。歌もそうだけれど、本はもっともっと深い部分であのころの自分と繋がっているのかもしれない。
マッチがひとりで擦れない、チラシの裏に絵を書く、泣きながら子供を叱る先生、モモちゃんって名前可愛くていいな~って思った自分。ミリさんが書く些細な思い出はいつしか自分の遠い記憶を呼び起こす。
ところで、表紙の絵、見覚えありませんか?「ぐりとぐら」みたいな二人は、おとなのミリさんとこどものミリさん。本のなかで、ふたりはピクニックに出かけます。
おとなになってよかった?
べんきょうしていいことあった?
ブラジャーってどんなかんじ~?
おとなってウソつかない?
こどものミリさんが、おとなのミリさんに質問してゆきます。
そんなページがところどころ現れます。
どれもおとなになった自分に問いかけてみたい質問ばかり。
今の自分はこれらの質問になんて答えるかな~。
シンプルな質問だけれど、意外に難しい(笑)
さて、ピクニックもそろそろおしまい。おとなの時間に戻りましょうか。
そんな気持ちで本を閉じた。