異界からのサイン:松谷みよ子著のレビューです。
今あるホラー作品のベースはきっとこれらの話から
まずは、これだけの体験談をよくぞ集めたものだとひたすら感心です。
この本に出てくる話はどこかでちょっと聞いたことがあるような「怖い話」。
父や祖母が話していた話に類似したものも多く妙に懐かしい。
今あるホラー作品のベースはきっとこれらの話のなかのどれかに辿りつくのではないかと思わせるようないわば「怖い話の基本」が詰まっていました。
怖い怖いと言っても、決して人を怖がらせるような内容ではないので、思わず涙を誘うようなものや、説明のつかない不思議な出来事の連続で、私にもそんなことあっな・・・という話もいくつかありました。
猫の話だけでも結構なバリエーション。
猫が湯治に行く話や、かつてモテモテだった牝猫の死につぎつぎとボーイフレンドの雄猫がお悔みに現れた話等々、動物の話はなんともほっこりした気分にさせられる。
逆に怖かったのは「富士樹海の死体」という自衛隊の隊員さんの話。樹海でコンパスが利かないというのは一部だけで、利くところもあるそうだ。そして、そのコンパスは不思議なことに死体の方向に向いちゃうそうな・・・。そこで富士の地元警察を呼ぶことになるのだけど、彼らはもう慣れっこなので、その処理がこれまたすごい。「わわわわーー」と、眠気も吹っ飛びました。
タイトル的に怖かったのは「写ルンです」。
若い方はご存じないかな。使い捨てのカメラなんですけど、いやぁ、これが。。。本当に写ルンです。なにがって?? 本書を是非お読みになってください。
他にも蝶の話とか、火の玉とか、話数がものすごい量。なかにはリアルに地名が出ているものもあり、がっつり怖さが感じられます。
松谷さんが、こういった人間世界に生まれるふつふつとした話をたくさん書かれているということを最近知り、図書館へ行くたびに松谷さんのコーナーをついつい覗いてしまいます。私を待っている本がまだまだたくさんありそう!(わくわく)