蕨野行:村田喜代子著のレビューです。
嫁と姑のデンデラは・・・ラストは圧巻!
村田さんの作品にハマりつつある今日この頃。どれを読もうか迷っていたら、村田作品にまさかのデンデラ系のものがあり、嬉しい悲鳴が!
作品は1994年に出版され、映画もあったようです。
ん~なぜに気づかなかったのだろう。
こちらの村もやはり60歳を迎えた老人は「蕨野」と呼ばれる村から離れた原野に移らなければならないという決まりごとがあった。
ここに移った老人たち8名は「ワラビ」と呼ばれ、毎日、村まで自力で往復し、畑仕事を手伝うことによってその日の食を得るという生活。ここが今までのデンデラ話とは違い、一応、住む場所は変わっても村へは顔を出せるのだが、ワラビたちは村人と口をきいてはいけない。
それにもし、足が萎え自力で村まで行けなってしまうと食料が絶たれ、仲間たちから少しずつその日の施しを分けてもらうしかないという。そして、村自体が食料難になると・・・やはりジジババたちには大変な生活が強いられる。
さて、この物語は顔をしかめているシーンばかりとは限らない。
独特な文体だが、いつしか心地よくなる
「お姑よい」
「ヌイよい」
という、呼びかけで話が進行する。お姑と若い嫁との対話形式だ。嫁と姑と言うと、いがみ合いだったりするのかなーと思ったのだが、それが全然!まぁ、なんともお互いがお互いのことを思い合い、実の親子のような温かい心の交流がこの二人にあるのだ。
村の様子、蕨野の生活など互いに報告し合いってゆくのだが、読めば読むほど、この二人の交流から感じられるいたわりが身に沁みてくる。そして、どこまでも切ない。なんだか離れ離れになった恋人たちの物語を読んでいる感覚になる。
そんな二人の結びつきが一体どうなってゆくのか・・・。
先の短いババに残された未来は明るいものとは思えないが、いや~ラストは圧巻。深いなぁー。打ちのめされました。
最初はどこの方言かも分らず、かなり読みにくく、読み切れるかな~と不安になったものの、途中から慣れたのか、グイグイと話の中に吸い込まれた。
生きること、食べること、思い合うこと、死を迎えること。
そして逞しいババの姿からは、最後の最後まで強い生命力を感じさせられるのだ。
さて、村田さんの作品を3冊読んだところですが、読むごとに作風ががらりと違っていて驚かされる。ものすごく没頭させられちゃう作品ばかりで・・・嬉しいような、困ってしまうような。睡眠時間を減らされてしまうのがちょっとね(笑)
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