読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

うずまきぐ~るぐる

本の紹介や日々のことをぐるぐるかきます

天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語:中村弦

本の紹介(男性作家な行)

 天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語:中村弦著のレビューです。

天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語

天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語

 

 

「住む人の心を狂わせる」という設計とは・・・

 

───彼が設計する建物は、そこに住む人の心を狂わせる───

こんな噂をもった孤独な建築家・笠井泉二。
銀座の洗濯屋の息子として生まれ明治から大正にかけての
波乱の時代を駆け抜けた謎の男の正体は一体?

「住む人の心を狂わせる」なんて言うとちょっと怖い内容のように
感じるかもしれませんが、そんなことはなく、むしろ依頼者の
変わった難しい願いを叶えてくれるような存在であることは、
第一話目を読めばすぐ判ります。

老元子爵夫人には亡き夫と過ごせる部屋を。
偏屈な探偵作家には外に出ることなく永遠に住める家を。
幼なじみの女性に子供の頃に書いて渡した1枚の絵と約束を。

など、他の建築家では太刀打ちできないような依頼を受ける笠井。
出来上がった建物は、吸い寄せられるような雰囲気を醸し出し、
その不思議な空気感に戸惑いながらも人々は酔いしれる。
それはちょっと現世離れしているような、あちらの世界へ
続いているような…

この話は、なんでそんな建物を欲しがったのかという
依頼者の話も面白いのだが、それと平行して、
笠井の辿ってきた道が徐々に判っていく様子も愉しめる。

笠井という男は物静かでミステリーな感じゆえに、
幼少時代、学生時代、そして結婚など、要所要所に、
妙な疑いをかけられたりする。笠井自身もまた数奇な
運命を背負って生きて来たということが判明する。

依頼者の話も笠井の話も、どちらも「これは一体どういうことなの?」
という気持ちになる話が多いので、集中して読みたい気持ちが高まる。
一話、一話、話がパッと切り替わるので、キビキビと読めるのも
気持ちが良い。

 

どこかに必ず天使が潜んでいるような気配がある

 

後半は思い切りハラハラさせられるシーンもあり、
最後の最後まで小説として見どころが多かった。

日本ファンタジーノベル大賞受賞作だそうです。
ファンタジーなの?と、思ってしまったほど、
ガシガシのファンタジーは感じません。

けど、この作品には、どこかに必ず天使が潜んでいるような…
装丁画の影響もあるのですが、話の中にも笠井の中にも天使が居る。
そんなところが、私にとってはファンタジーだったかな。

なかなか面白い設定で魅力的な作品。
派手さはないけど、印象強い内容であった。