死者はまどろむ:小池真理子著のレビューです。
共同墓地に向かう葬列を見たときからはじまる恐怖
「墓地を見下ろす家」が面白かったので、引き続き小池さんのホラーを読んでみた。新しい場所に移る家族とそこで起こる恐怖体験というコンセプトは前作と同じ。しかし、今回は都会から田舎へと舞台は変わる。
「夢見村」。
ここは自然溢れる東北の小さな美しい村。
この地は隠れキリシタンが開いたという場所でもある。
小説家の夫がスランプに陥ったことより、妻の亜希子はこの美しい村でひと夏を過ごそうと別荘を借り家族(夫、息子、義母、妹)を連れてやって来る。
都会の生活とは違い、日に日に元気になる家族。何もかもが怖いくらいに順調にすすむ。しかし、この村にある教会、共同墓地を見たことにより、何かこの村には隠されたことがあるのではないか?と徐々に感じ取る家族。そして、共同墓地に向かう葬列を見たときから何かが狂いはじめる。
前作ではマンションの地下から、本作品では教会の地下室から…足元がゾワゾワする感じは一緒。そして地下という深くて濃い闇の世界。消えた人、亡くなった人…の行方は?
その後、この村から逃れるように家族は都会に戻ってくるのですが、そこで話は全く終わっていない。むしろそこからスタートしているとも言える怖さがある。
終わらないものの恐怖がひたひたと・・・
夫はこの出来事を書き留めておこうと、一心不乱で書き綴るが、またそれが大きなきっかけになってしまうのです。そしてこの一家が次に逃げた場所は…。前作と同様、完全な終わりを迎えない感じがムズムズする。
解説で坂東眞砂子氏が、
「小池氏は日本的な皮膚感覚を持った作家である」と言っている。
そうそう、ゾンビとかポルターガイストや吸血鬼のような怖さは私にとって、ちょっと別物なんですよね。本当に怖いと感じるのはやはり日本人が描くこのような作品だ。視覚的なものより心理的にくる恐怖。小池さんのホラーからは、そんなものを存分に感じさせられます。