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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】ここは退屈迎えに来て:山内マリコ

 

 

 ここは退屈迎えに来て:山内マリコ著のレビューです。

ここは退屈迎えに来て

ここは退屈迎えに来て

 

 

くすぶれ、くすぶれ、若者たちよ!

 

山内さんの作品は献本で初めて読み、ジェネレーションギャップは
あったものの、それが逆に懐かしいようでもあり、なにか心に
刺さって来るものがあった。

 

ぜひ、処女作をと思い、再び小説の中に入ると、「そうそう、この空気感!」と早くも山内さんの世界が1ページ目から広がっている。

 

「若さがフツフツと発酵している音が聞こえる」

 

本文の中にあった言葉ですが、私にとって山内さんの小説に出てくる若者たちってまさにこの表現がしっくりくる。

 

8編からなる短編集は、どれも女性たちの心境が上手く描かれているだけでなく、地方都市が実際どんな場所であるのかというのも肌で感じさせてくれるものがあった。

 

地方都市は「ファスト風土」とも呼ばれているんですってね。TSUTAYA、ユニクロ、しまむら、スタバ、ブックオフ等々、小説の中に様々な大型店舗が登場する。

 

実店舗名を挙げることによって、よりリアルな視点へと読者を誘い込み、いつしか自分が国道を走っているような感覚が。どんどん頭の中で映像化されてゆくようなリアリティがあった。

 

登場人物の女性たちも年齢も職業も様々。なかには留学生も登場する。そして学生時代、女子の憧れの的だった「椎名君」。ちょこちょこ椎名君を登場させることにより、
彼と彼女たちが上手く絡み合い、卒業後の様子が分る展開も面白い。

 

 

 

年齢によっては昔の自分に出会える作品

特に目的もなく仲間と集まって、音楽聴きながら気ままにドライブしたり、アホみたいに夜中の海ではしゃいだり、無駄にエネルギーがあった時代を、どーしても、どーしても山内さんの作品を読むと思い出してしまう。

 

それはちょっとした会話の中であったり、ちょっとしたアイテムの名前からだったり。

恐らく私は20代の人が読むのと違った視点で愉しんでしまっているのだろう。

 

車の窓ごしからナンパする若者とか、ハルタのローファーなんて、何十年ぶりに聞いた響きだろう。ハルタからリーガルにしたときの大人感は忘れられないときめきだったのに、もうすっかり忘れていた。

 

あれよあれよと気づけば制服姿の自分たちの姿が鮮明に蘇り、心はあっという間にハイティーンに!

 

ということで、山内さんの作品は年代別に読み方がきっと変わるのであろうと睨んでいます。年齢によっては昔の自分に出逢える小説かもしれません。だから、若い人たち向けの小説とは括れないものがあると思うのです。

 

くすぶれ、くすぶれ、若者たちよ!
若さをどんどん発酵させるがいい(笑)