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千の花になって:斉木香津

 千の花になって:斉木香津著のレビューです。

千の花になって

千の花になって

 

 

戦時中の横浜の風景を描く

 

昭和19年の横浜を描いた作品です。
戦時中の話ではあるのですが、とても淡々とした雰囲気で、
登場人物たちも、どこかヒンヤリしたものがあるので、
誰かに感情移入するとか、心が掴まれるようなこともない。

それでもなにか引き込まれるものがあるから不思議だ。
退屈な小説でもないのです。

主人公・真砂代は容姿も性格も少々さえない女性。
お見合いも断られ、なんとなくつまらない日々を過ごしている。
戦争も激しくなってゆくなか、親も姉夫婦も疎開で横浜を離れるが、
真砂代は銭湯を経営している祖父と残ることにした。
祖父と二人暮らしは、今まで精神的に窮屈だったものから解放され
なんとか頑張れそうと感じていた。

そんな時、あるきっかけで、真砂代はちょっとミステリアスな
貴子と言う女性に出会う。

そして彼女の家の手伝いをするようになるのだが、
戦争中だというのに、貴子は絵を描きながら食べるものにも
困らないほど贅沢な生活をしている。
貴子の発言、行動などに反感を持つ真砂代は
常にトゲトゲした態度で接する。

二人の会話はいつも一触即発。
しかし、時間を重ね、貴子の恋愛話を聞くうちに
次第に関係が好転してゆくのだが、戦争は激しくなり、やがて・・・。

小説の軸はこの二人の女性なのですが、
真砂代と祖父の生活の様子もなかなか良いものがある。
また、戦時中の横浜が東京とどのくらい違いがあったのか?
なども、小説から感じ取れ、興味深い。

 

登場人物たちに感情移入するものはないが・・・

 

全体的にこの時代の話のわりには、サラッとしている。
ラストは時間を経ちずっと心に留めていたものが解放されたような
気分にさせられる。戦争が終わって何十年経っても、心の中に
あったのだなぁーと。

このラストシーンは、ちょっと原田マハさんの
アート小説っぽい感じで、なかなかジーンとくるものがありました。

それにしてもこの真砂代という女性って貴子以上に私には
掴みづらかったなぁ。

頑なすぎる、不器用、真面目・・・なのか?
全体的にひねくれていて、マイルドな部分がない。
なにかこう見ていて肩を叩きたくなっちゃうような(笑)
彼女の頑なさが、やけに後を引いたなぁ・・・。