学研プラス: 犬やねこが消えた:井上こみち著のレビューです。
読書感想・あらすじ 戦時中の動物供出とは
ペットとこんなにも辛い別れが、かつてあったとは…
とても無念な気持ちでいっぱいになった1冊です。
戦時中の動物供出について書かれています。
犬は軍服の毛皮・軍犬、又は狂犬病防止の為…などからの理由で供出しなければなりませんでした。
当時、自分の家で飼っていた犬や猫がどう戦争に関係があり、何故、供出しなければならないのかという子供たちの訴えに、親たちがどう答えればいいのか苦労している様子が窺えます。何と言っても大人ですら、その理不尽さに戸惑っているのですから。
「お国のために」という言葉で片付けてしまうにはあまりにも残酷な出来事です。
そんな中、動物を守り通した家族の話もありました。とても勇気のいる行動です。
そして、手記の中には供出された犬猫を殺す役目の人の話も出てきます。誰も好き好んでする仕事ではなく、こちらの立場も考えると胸が痛くなります。
本書では作者が各地を周り、様々な人々の証言と証拠を集めた大変貴重な1冊。
可愛がっていた動物との悲しい別れを今も引きずって生きている方々のやるせない話は苦しくなるほど辛いですが、大人も子供を忘れてはならぬ出来事だと思います。
井上こみちについて
埼玉県生まれ。日本児童文芸家協会会員。『カンボジアに心の井戸を』(学研)で第28回日本児童文芸家協会賞受賞(Amazonより)