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【レビュー】イルカと墜落: 沢木耕太郎

 

 

 イルカと墜落: 沢木耕太郎著のレビューです。

イルカと墜落 (文春文庫)

イルカと墜落 (文春文庫)

 

 

えっ? 本当に 墜・ち・た・ん・で・す・か? 沢木さん!

 

本書のタイトルが面白くて思わず借りてしまったんですが、「なになに???本当に墜ちちゃったの!沢木さん!!」まさか!まさか!の展開で、不謹慎ながら大興奮!

 

今まで一度も南米を訪れたことのない沢木さん。
私的な友人を通し、ブラジルにはちょっとした繋がりがあり、前々から行きたいと思っていた。そこへ仕事が舞い込み出かけることになる。しかもアマゾンの奥地へ!さぁ、旅が始まります。

 

前半は「イルカ記」、後半は「墜落記」、2つのパートに分かれた構成。

「イルカ記」はいわばアマゾンでの旅行記といった内容で、大自然の中に放り込まれた様子が描かれている。

 

そこで見たピンクのイルカ。蛍のように光るカーガ・フォーゴという謎の生きもの。
この生きものが意外にも後の「墜落記」に繋がる。一旦日本へ戻り、再び沢木氏はブラジルへ渡る。ここからはもう信じられない激しい展開なんです。

プロペラが止まった・・・・。
パイロットが「後ろの荷物を捨てろ!」と叫ぶ。

一生のうちで、決して聞くことのないまさかの言葉。その役割を負わされる沢木さん。

 

そして、あーあーあー
沢木さんの乗ったセスナが本当に密林に墜落しちゃうのです。

 

と、あっさり書いてしまったが、実際の緊迫したやり取りと、究極状態での沢木さんの心境や行動は、是非本作を読んで、臨場感を味わっていただきたい。興奮と緊張の連続を、お約束いたします。

 

言うまでもなく、沢木さんは奇跡的に助かるのだが、その後運ばれた病院での出来事等々、こんな体験談は滅多に聞けるものではない。

 

本書はこの山場に至るまで、ちょっとした不吉な予感を感じさせられるシーンが登場している。読者からしてみれば、まさか沢木さんが事故に遭うとは思ってもいないので、単なるエピソードとして読んでしまうわけだが。

 

例えば、向田邦子氏の偲ぶ会に招待された話であったり、この旅で日本からバンクーバーに向かう途中で9,11の同時多発テロが起こったことにより足止めでブラジルに行くまで1週間かかったり。

 

そして、「イルカ記」で登場したカーガ・フォーゴ。そういえば…的なことが次々蘇る。

 

なーんか気乗りしない・・・あの坂本九ちゃんもそんな風に出かけたそうだが、人間には無意識に危機感をキャッチする能力がもしかしたらあるのかもしれませんね。

 

すぐそこにあった「死」を見た沢木氏。どんな状況でも冷静に客観視しているところがすごい。

 

「えらい話だったんだなぁ」気楽に読み始めただけに、あとになってジワジワ来るものがあった。ところでこの話、ニュースになったんでしょうか?報道も同時多発テロで小さなセスナどころではなかったのでしょうか。