うずまきぐ~るぐる

本の紹介や日々のことをぐるぐるかきます

石の神:田中彩子

 石の神:田中彩子著のレビューです。

石の神 (福音館創作童話シリーズ)

石の神 (福音館創作童話シリーズ)

 

 

ゴッツゴッツな骨太な作品

 

時は江戸時代、上州の石屋「大江屋」には、
個性豊かな職人たちが集まって来ている。

寛次郎は石工に憧れをもっている少年。
まだ10歳という若さで、大江屋に弟子入りします。

寛次郎の下に入って来る者がなかなかなかったため、
彼はずっと雑用として働いていたのですが、ようやく
「捨吉」という少年が弟子入りすることになった。

捨吉は母親に捨てられ、荒れ地という場所で、
村の番をする男に育てられていたのですが、
男は捨吉の将来を思って外に出すことにした。
しかし、その道中に捨吉は逃げ出してしまい、
結局、行くあてもなく衰弱しきっているところに、
大江屋の石工に助けられ、そのまま大江屋で働くことになった。

捨吉は申年に拾われたのでここでは、
申吉と呼ばれることになる。

二人の少年の生い立ちが判ったところで、
大江屋の日常が描かれてゆく。

捨吉と寛次郎はやがて見習いとして成長してゆくのだが、
まったく異なるふたりの仕事ぶりなどから、どちらの少年の成長ぶりにも
興味をそそられます。

特に捨吉の冷めきった無愛想な態度や謎めいた行動が
この物語をちょっとしたミステリアスな雰囲気を
醸し出しています。

やがて、この二人の少年は腕比べということで、
どちらが良い地蔵を作るか、競うことになります。
さて、勝負の行方は・・・。

 

地味ながらも色々な要素の含まれた物語

 

憧れをもってこの世界に飛び込んできた少年。
神も仏も信じていないのにこの世界に入ってしまった少年。
それを見守る熟練した大人たち。

職人たちの会話も活き活きとしているし、話の展開も適度にあって、
なかなかバランス良い作品だなぁーと感じた。

地味と言えば地味なんだけれど、読後はずっしり来るものがある。
石を削ったり、掘ったり・・・きっとそんなシーンの積み重ねが
意外にも強い印象になって残ったような気がする。
少年の成長物語、職人の物語、ライバルの物語、
振り返ればいろんな内容が盛り込まれていたなぁ・・・。