タイムスリップ森鴎外:鯨統一郎著のレビューです。
モリリンこと森鴎外、現在の渋谷に現る!!
もうどうしょうもなく、くだらないなぁと思うのだけれど、イマドキの女子高生と、80年の時を経てタイムスリップしてきた森鴎外との掛け合いが面白く、気づいたら読み終わっていたという。乗せられちゃったなぁ~。
タイムスリップしちゃう話はよくあるけれど、主人公が文豪だということもあって、本の話題が大雑把ながらもふんだんに盛り込まれている。これがいい感じに本好きのツボを押してくる。
舞台は渋谷・道玄坂。
なにものかによって命を狙われ、タイムスリップさせられた森鴎外。
やって来て早々、若者に袋叩きにされてしまう鴎外。
そこへ助けにやって来たのが超ミニスカの女子高生・うららと七海。
チャラチャラした女子高生ではあるけれど、なかなか優しく気が利いている。衣食住全般、鴎外のお世話を要領よくやりこなす。彼女たちに「モリリン」と呼ばれ、徐々にこちらでの生活に馴染んで行く鴎外ではあるのだが・・・。
前半は、大正時代からやってきた人が現在の生活を見るとこんな風になるのかと、そのギャップが楽しい。「金之助君がどうしてお札に・・・」って、驚き動揺するモリリン。友だちの夏目漱石がお札に載っていて茫然とするのだ。
そんな奇妙な発言や様子に爆笑したり不気味がったりする女子高生。
モリリン、頑固な感じなのかなーって思ったのですが、意外にも順応性抜群で、ぐんぐん女子高生とも距離が近くなります。
ちょっと想像してみてください。
・ユニクロを着る森鴎外
・マックで注文している森鴎外
・書店で自分の本を必死になって探す森鴎外
・宮部みゆきを読む森鴎外
・ネットでホームページ作りをする森鴎外
・ラップやカラオケを歌う森鴎外
もうこのあたりは、顔の筋肉が緩みっぱなしで読んでいました。
また鴎外の朴訥でちょっと威圧的な話し方を軽ーくかわす女子高生とのイマドキな会話は、噛み合っていないようで、実は噛み合っていたり。なんとも不思議な空間が生まれています。その凸凹した会話が面白すぎて、何度もよろけそうになりましたもの。
後半はミステリーの謎に迫る
さて、本書は爆笑しているだけではなく、ミステリーとしての部分を後半掘り下げて行く。大正から昭和のはじめにかけ、若くして次々と亡くなった文豪たち。偶然なのか?病死、自殺、犯罪絡み・・・一体、そこには何かあったのだろうか?太宰や芥川など有名どころが続々と登場します!
ということで、モリリンは再び元の時代に戻れるのでしょうか?謎も解け、「あーすっきり!」と、笑いの余韻を楽しみながら読了です。
うららちゃんたちも良い子たちだったし、森鴎外もぐっと親しみやすくなったなぁ。
「モリリン」という愛称もなんだか妙にハマってしまいました。(笑)