デンデラノ:ひろのみずえ著のレビューです。
キャピキャピした老女たちって!?
児童書コーナーでふらふらしていたら、目に飛び込んで来た。
「デンデラノ」って背表紙・・・。
「まさかね。表紙も変なサルみたいのだし、
しかもデンデラノだし。」
一刻も早くこの場を立ち去ろうとするのだけど、気づいたら
あらすじなんぞを読んでいた。
そこで見たもの文字には「奇妙な老人集団」。
そうですか、そうですか・・・・。って、また面白そうじゃない!
こうしてまた1冊。デンデラの病が発症した模様です。
今回の老婆たちはスーパーで女子高生のように
キャピっとした歓声を上げて買い物をしているという
今までのデンデラ系老婆と一味違うテイスト。
年齢は80歳すぎに見える老婆から中には
100歳以上なんて老婆も居る。
きゃあきゃあと歓声を上げ、目は異様なまで輝いている。
中学生の卓は同級生の杏をからかい怒らせてしまう。
下校時に杏の御機嫌を取ろうと、彼女のあとを
ついて行ったことにより、この集団を目撃してしまうのだ。
卓の住む町は革新的なビルの建設が盛んに行われている一方、
老人だけが集まって生活している場所もある。
そこが「デンデラノ」というわけだ。
ここは老婆だけでなく、老爺もいる。
卓は大猿の経立という不気味な猿(老人たちをまとめあげている猿)にデンデラノにつれ去られ、老人たちの信仰する「鳴子様」として
崇め奉られます。
やがて卓は一旦外に逃げ出すものの、卓の髪が赤く光り、
うごめくようになってしまったため、デンデラノで生きる
決意をするのだが・・・。
卓は家族の愛情に恵まれず、なにか浮ついた感じのする少年だった。
一方この老人たちもまた自分たちのルールのもと平和に
暮らしているように見えるけど、「鳴子様」のような存在、
つまり何かにすがっていなければ生きていけないような
寂しさと脆さがある。
何といっても登場する老婆たちに注目だ。
「みきねぇ・・・」と、自分のことを名前で呼ぶギャルっぷりや、
顔を赤らめる純真さを見せる老婆まで、今までにないデンデラ系
老婆たちなのだ。
異色ファンタジーと称された物語ですが、後半に向かうほど、
人間臭い本当の部分が見えてきて、なかなか爽やかな
ラストを迎えます。
著者の方は石崎洋司さんのお弟子さんで、
「老婆通り」の夢をみたことによりこの話を作ったそうです。
どうもデンデラ系老婆たちに狙われているな。。私。