BAR追分:伊吹有喜著のレビューです。
新宿の裏路地にて・・・
新宿三丁目の交差点付近の路地裏にあるBAR(バール)追分。
昼は定食やお茶が楽しめるバールで、夜はバ―になるという
本当にちょっとありそうな小さなお店の風景を描いた小説。
ねこみち横町の奥にあるこのお店。
昼間は可愛いらしい女店主。夜は白髪のバーテンダーが
お客さんをもてなしています。
プロローグから4つの話が展開される。
シナリオライターを志す青年の生活、結婚する娘と父親の
ちょっと切ない話、「ねこみち横丁振興会」の人々等々、
登場する人々の様々な人生模様を覗きながら、
いつしか誰もがこの町の雰囲気が好きになっちゃうような
気持ちの良い小説。
人間模様だけでなく、食欲も刺激され・・・。
なんというか人々のサラッとした優しさが心地良いのです。
ベッタリ馴れ馴れしいといったものではなく、適度に
相手のことを観察しつつ、本当にしんどそうな時に、
さっと動いて手を差し出してくれるような・・・
そんな大人の人情みたいなものがほんのり伝わって来ます。
また、追分という場所と人生の分岐点が自然に浮かんで来ます。
ずっとここに留まってはいないであろう人々の分岐点などを
考えながら、次々と紹介されるお料理とお酒に思い切り
食欲を刺激されまくりました。
カレーが食べたい、ジンが呑みたい、秘密のお風呂にも行きたい!
と、すっかり「ねこみち横丁」の一員になった気分で読了です。
伊吹有喜 さんの「なでし子物語」が大好きなのですが、
この小説はそれとはガラッと雰囲気が異なり、
色々な顔を持った作家さんなのだなぁーと感じました。
余談ですが、私はずっと新宿のゴールデン街のイメージで
この話を読んでいました。
しばらく行ってないけど最近どうなんだろう?