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うずまきぐ~るぐる 

*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー・あらすじ・感想】おとぎ話の忘れ物:小川洋子

 

 

おとぎ話の忘れ物:小川洋子著のレビューです。

 

感想:ひっそり待ち構えているゾワゾワ感。

 

「小川さん、怖いってば…。」

ひとつの話の終わりに必ず、この言葉が思わず出てしまう。
そして、ゾワッとした寒気が5秒後に背中を走る。

 

人魚って女性のイメージが強かったのですが、男性の人魚が登場する話は初めて読んだ。女の人魚に奉仕し何の見返りも求めず死んでいく男の人魚たち。

 

そう言えば昔、マドンナのライブで男の人魚たちが彼女にまとわりついてうっとりした表情で舞台を賑わせていたシーンがあったなぁ。まさに、マドンナのために尽くすというちょっとマッチョな男人魚たちはこの話の人魚たちの姿と重なる。

 

男の人魚は海面に浮かびあがれず、地上に姿を現すことができません。
地上の光を浴びると、身体が溶け海の泡となってしまうという。
なので深海の底で一生を送るのです。

 

本書で取り上げられている男人魚は「人魚宝石職人の一生」という話に出てきます。
この職人が作った首飾りは一体どんなことを巻き起こすのか?

 

 

 

 

その他…
赤ずきんの赤の意味は?
アリスという名前の意味は?
愛されすぎた白鳥の運命は?

 

どれもこれも最後に大きなゾワゾワ感がひそっりと待ち構えています。そして、この本の魅力をさらに強めているのは何といっても樋上公実子さんの美しくエロティックな絵の数々。

 

実はこの絵が先に出来て、あとで小川さんが物語を作ったそうです。
絵を見てこんなにも素敵な話を作ってしまうなんて…やはりプロだなぁ。

 

本の構成も絵が数ページ続けて掲載され、そのあとに物語が来る。
なので最初は「この絵は何を意味するのか?」と不思議な気分で眺めるのですが、読み終えて改めて見ると、なんとなく分かったような気になリました。

 

「忘れ物図書室」にはこれらの珍しい本が集まっている。一体、誰がどこから集めたものなのだろうか?このあたりの設定も本書の面白いところ。

 

口の中にキャンディーひと粒放りこんで、どっぷり大人のおとぎ話にハマってみたくなります。私はこの本の雰囲気がすごく好きです。大満足でした。

小川洋子プロフィール

1962(昭和37)年、岡山県生れ。小説家。早稲田大学第一文学部卒。1991(平成3)年「妊娠カレンダー」で芥川賞受賞。『博士の愛した数式』(読売文学賞、本屋大賞)、『薬指の標本』『いつも彼らはどこかに』『生きるとは、自分の物語をつくること』(河合隼雄との対話)はじめ多くの小説・エッセイがあり、海外にも愛読者を持つ。芥川賞選考委員、河合隼雄物語賞選考委員など。(新潮社著者プロフィールより)

おとぎ話の忘れ物 文庫版