妻の超然 :絲山秋子著のレビューです。
夫が出かけたあとに「ぴんぴんころり」と・・・
なんだろう?この辛辣な感じ…
ゆっくりとボコボコにされる感じがあります。
溜め込んだ毒を少しずつ吐き続け、最後はトイレにザザッーーと流しちゃうようなスッキリ感もあります。この小気味好いテンポと毒っけ…確実にくせになりそうです。
【超然】物事にこだわらず、平然としているさま。世俗に関与しないさま。
本書ではこの「超然」に関する短編が3つ。
妻の超然、下戸の超然、作家の超然です。
どの話もそれぞれ面白いので、誰が読んでもこの3つ中から、コレがいいな…と思うものがあると思います。
私はどれも好きなんですが、「妻の超然」はホラーテイストで読むと面白い。
50歳近い主婦が、夫の浮気に気付いているのですが、特に夫を責めたり、喧嘩になるというような修羅場はない。そう、タイトル通り妻は常に「超然」としているのだ。彼女はひっそり、アレコレ気付いたことから想像を膨らましては、心の中で毒づき、恨みを晴らしていく。そのコテンパンっぷりが、怖面白いのです。
夫が出かけたあと、北側の部屋のドアに指先で「ぴんぴんころり」旅先の絵馬にも「ぴんぴんころり」…と書く妻。こんなことされてたら、読んでる方は超然としていられなくなる。特に浮気経験のある男性が読んだら、きっと怖いと思いますよ。
これはほんの一例ですがこんな感じで、水面下で徐々にボッコボッコにされます。夫婦喧嘩やパートナーとの間で、むしゃくしゃしている女性にもいいかも(笑)
「下戸の超然」は、下戸の人、そして下戸の彼氏を持つ女性が読むと共感度が高いと思います。また「まだ結婚はいいや…」という男性が恋人に対して、はっきりしない様子とか、関係がもつれて行くあたりの感情の動きなどが非常によく描けている。
なんかあっと言う間の読書時間だった。