うずまきぐ~るぐる

本の紹介や日々のことをぐるぐるかきます

負け逃げ:こざわたまこ

 負け逃げ:こざわたまこ著のレビューです。

負け逃げ

負け逃げ

 

 

ジメッとした閉塞感から逃げ出したくなる

 

タイトルといい、装丁といい、気軽に読めそうな雰囲気の小説。
・・・に見えたけれども、やはりR-18文学賞受賞作!
さほどボリュームがあるわけではないのに、
読むのに時間がかかりました。

とにかく重苦しい。
特に問題にしなければずっとそのまま普通に
生活できるはずなのに、「田舎」という場所の閉塞感が
じわじわと読者にも伝わって来て、ずっとそこにある
憂鬱な空気がたまらなくなる。

そう「逃げ出したい!」という気持ちを起こすのだ。

山内マリコさんも地方の閉塞感を描いた作品があったが、
あちらは若者のくすぶったエネルギーが炸裂していたが、
こちらはもっとジメッとした陰鬱な雰囲気がある。

登場する人々も若者だけでなく、学校の教師の駆け落ちなど、
年齢層も幅広い。そう言った意味では桜木柴乃さんの小説を彷彿
させられたり・・・。

と、様々な女性作家さんたちの顔が浮かぶわけだが、
とにかくどんよりした空気感が満ち満ちています。

どこに居ても、何をしても、誰かに目撃されてしまうような
小さな村。繁華街をうろつけば数日後にはあちこちに知れ渡る。
ラブホテルも登場するが、車がそこに止まっているだけで
誰が行ったのか判ってしまうなんて!!いや~リアルすぎます。

そんな場所から一刻も早く逃げ出したいと思う者。
逃げ出したくても、逃げ出せない者。
一旦外に出て、また戻って来る者。

各章は、学校の生徒と教師が1話ずつ主人公として登場する。
特に印象的なのは、足が不自由な女子高生、野口だ。
こんなに狭い村で、ごく普通の女子高生が夜な夜な色々な男性と
身体の関係を続けている。偶然そのことを知る同級生の田上。

 

田舎の風景に結局は閉じ込められてゆくような・・・

 

冒頭からやるせない話から入るわけですが、
このトーンは最後まで変わらない。
どの話も明るい未来が待っているようなものでもなく、
淡々とした田舎という風景の中に人々が閉じ込められ、
溶け込んで行くような、ちょっとやるせない
余韻を残すものが多い。

心の奥底に潜む、引き出せそうで引き出せない得体の知れないものを
うまく文章として表現できる作家さんだと感じた。
今後も、様々なジャンルの人々の葛藤を描いてくださると
期待しています。

R-18文学賞の受賞作品はなにか一貫とした流れを
感じさせられものがありますね。
なかなかの新人さんが生まれるこの文学賞は、毎度本当に
楽しみになっています。