感情8号線:畑野智美著のレビューです。
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感想:環状八号線沿いの町を舞台に繰り広げられる女性達の姿
ウマイタイトルだなーと、手にした作品。
環状八号線は私もよく利用する。この 道路に沿って、電車が走ってくれるととても便利になるんだけどなぁーといつも思うし、実際そんな話もあったけれども、結局、この縦のラインは車やバスで移動するしか移動手段がないという。
本書はそんな環状八号線沿いの町を舞台に繰り広げられる女性達の生活を描いたもの。
「荻窪」からはじまる話は「八幡山」「千歳船橋」「二子玉川」「上野毛」「田園調布」へとバトンタッチしてゆく。
その土地のもつイメージというのがあると思うのですが、新しいマンションが建ち並び、お洒落な町として人気上昇中の二子玉川とか、お金持ちの住む田園調布か・・・。
そこに住む典型的な「像」を主人公にして小説が描かれる。
片想い、DVの恋人、新婚夫婦、お嬢様の恋愛等々、どれも身近にありそうな20~30代女性たちの問題を取り上げている。登場人物たちは、どこかで少しずつ繋がっている設定。
どの女性もう~ん、幸せになりたいと望んでいるけど、なかなか到達できないもどかしさを含む。すぐそばに幸せがあるのにその距離は遠い。そう、それは環状八号線そのものなのだ。車で行けばすぐのところなのに、電車だと遠回りしないと行けないところ。
短編でサクサク読めるのですが、結構しんどい話もあり、決して爽やかな恋愛小説ではない。その後・・・的なものを読んでみたいと思う。彼女たちが40代、50代になった設定のものを。おそらく環状八号線沿いに住んでいる人は居ない気がする。
いつかは近道も覚えて、このモヤッとした感情から卒業しているんだろうな・・・と思ったのは私だけかな?