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うずまきぐ~るぐる

本の紹介や日々のことをぐるぐるかきます

夕べの雲 :庄野潤三

 夕べの雲 :庄野潤三著のレビューです。

夕べの雲 (講談社文芸文庫)

夕べの雲 (講談社文芸文庫)

 

 ◆晩年にもう一度手にしてしまうだろうな…。

日が昇って、日が沈む。
何度も見る当たり前の風景だけど全く同じ風景ではない。

自然豊かな丘の上の家に引っ越してきた大浦家の人々の
生き生きした会話を通して、そんな些細な変化や
出来事を見ながら、読者も様々な情景に思いを馳せるのです。

時に懐かしく、時に微笑ましく、時に時間をかけて失った
あの頃の風景だったりと。

決して大きな変化や事件が起きるわけではない。

通常なら「何か」を期待してしまいがちの自分。
でも、この小説に関してはそんなことはちっとも思わず、
ずっとこの穏やかな時間を保っていて欲しいという気持ちが
途中から芽生えていました。

作家である大浦と妻、そして娘の靖子、息子の安雄と
正次郎の5人家族。ちょっと読んだだけで、この家族に
好感がもてるというのもこの話の魅力のひとつ。

特に子供たちがとてもいい。私が好きなシーンは…
正次郎が風邪を引いた部分。
本当に普通の光景なんですが思わずクスリと笑ってしまいました。

「寝る前に大根おろし、作ってあげるから。
梅干しと熱いお茶に入れてお醤油を落として、
おいしいの作って上げるね。」と母親が言うと、
いきなり安雄が猛烈な咳を始めた。
靖子まで咳を始めた。

結局、子供三人はこの「おいしいの」をそろって飲むのです。
こんなシーンの子供に出会うと、無条件になんだか
嬉しくなってしまう。
子供の無邪気さになんだかホッとし、そして親の温かさに
包まれた気持ちになる。

 

◆子供視点、大人視点、どちらの読み方でも愉しめる

 

この小説は、大人の立場、子供の立場、両方の視点で見られることが
楽しくもあり、情景も浮かびやすいというのもあって、自分の中で
勝手にフィルムが回りはじめているような感覚がありました。
なので淡々と読んでいるようで実は結構忙しかったのかも?
なんて振り返ってみて感じました。

どう言ったらいいのかな…。
夕日を背中に早くお家に帰りたくなるという本でもあるし、
何故だかわからないけど、晩年にもう一度読みたくなるであろうと
思わされた本でもありました。

庄野さんの奥様、写真が載ってましたが、
まさに「細君」って感じの方ですね。
これまたイメージ通り(笑)