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うずまきぐ~るぐる 

*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】黄色い雨:フリオ・リャマサーレス

 

 

黄色い雨:フリオ・リャマサーレス著のレビューです。

黄色い雨 (河出文庫)

黄色い雨 (河出文庫)

 

 

感想: 縁ある人にはきっと手元に届く本だろう・・・そんなことすらも感じてしまうような深い1冊。

 

最後のページを閉じると、思わず大きく深呼吸。しばらくなにもせずボーっとしていたい感じと、早く頭を切り替えて今の生活に戻りたい気持ちと、なんだかとても複雑な気持ちのままでいました。

 

すごい小説なんだと思う。

実際読むのが辛くて毎日数ページずつしか読めなかったし、この本を読んで寝ると得体の知れない怖い夢をみた。そんな思いまでして読むことないのに…と思うのだけど、廃村した村で雌犬と暮らす老人のあの静かで孤独な生活が、自分の中でいつしか日常になるような感覚が妙に心地よくなって、数冊枕元に積んである本の中から進んでこの本を深夜に読む生活が続いた。

 

「死」に関してビジュアル的に深く心に刻まれた藤原新也さんの「メメント・モリ」に対して、こちらは忍び来る「死」というものをただ文字という形のみで、生きる者の中に平然と侵入してくるものがあった。

 

あぁ、なんて小説なんだ。

物語は朽ちた村でやがて訪れる死を想いながら、たった一人で暮らす男の話。
雌犬と暮らす毎日はすでに生きていながら無力感が漂い、やがて家には亡霊までもが現れるようになる。そして、男は昔を回想しながら死期を待ち続ける。

 

 

 

後半になればなるほどしんどくなるんだけど、ページをめくる指が止まらない。変な言い方だけど、この老人を看取ることになるだろうという気持ちを抱え、残り少ない日々をこの老人と過ごすのだ…という覚悟と一体感すらも生まれていた。

 

孤独・寂しさ・哀しみ・恐怖心、そして記憶。そういう人間の持つ感情のずっとずっと奥深い部分に踏み込んだような気がしています。

 

普通の生活をしているとなかなかこんな世界は考えもしない。だからこそ、この本を読んだことは何か自分には意味があったのだと思う。

 

縁ある人にはきっと手元に届く本だろう・・・そんなことすらも感じてしまうような深い1冊でした。