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うずまきぐ~るぐる

本の紹介や日々のことをぐるぐるかきます

四十八歳の抵抗:石川達三

 四十八歳の抵抗:石川達三著のレビューです。

四十八歳の抵抗 (新潮文庫)

四十八歳の抵抗 (新潮文庫)

 

 

◆55歳で定年、そんな時代のサラリーマンの最後の抗い

 

昭和30年代の48歳のサラリーマン男性を描いた小説。
48歳の男性ってどんなイメージ?
若者から見たら、おじさん真っ只中って感じでしょうか?

ちなみに現在の48歳の男性、分かり易いところで言えば、
阪上忍、織田 裕二、江口 洋介。
私から見ればまだまだ仕事もノリノリ、現役バリバリ世代といった
イメージですが、本書を読むと「初老世代」と思わざるを得ない。

なんでも55歳定年と言われていた時代。
定年まであと7年という段階に入った
サラリーマン男性の心境とは?

現在は定年も伸びに伸びていることから、
60歳から65歳くらいの男性がちょうどこのような気持ちで
過ごしているのではないかなーと、勝手に推測しております。

主人公・西村は保険会社で次長というポジション。
順調なサラリーマン生活、家庭もそこそこ上手くいっている。
このまま毎日同じように暮らせば数年後には定年を迎える。

しかし、単調な毎日は退屈。
このまま何事もなく老いて行くことに焦りを覚え、
部下の誘いで、ちょこちょこと「冒険」を始める。
そしてバ―で出会ったユカに恋をするのだが・・・・。

一方、家では年頃の娘が年下の学生と恋に落ち旅行に出た。
結婚も考えている二人。西村は猛烈に反対し、
娘と相手を説教するが、自分も若いユカと旅行をするなど
矛盾が生じてくる。

「言ってることと、やっていることが違う。」という
典型的なパターンで思わず笑いたくなるのだが、
この時代、たかが男性が3歳年下だってことが
結婚の障害になってしまっていたんですね。

「小心者のいい大人がなにやってんだか?」と笑ってしまう反面、
思春期の学生のように、女性に恋焦がれる中年男性の姿が
ちょっと可愛く思えたり。

こんなシーンがあった。

好きな女性の写真が入った封筒を胸に抱いて眠る西村。
保険会社の次長でもなく、良人でもなく、娘の父でもない。
48歳という年齢も超越した、孤独な宙ぶらりんな気持ち。
自分が何かしら悲しくて、眼尻から涙がながれていた。

なんとも切なくもの哀しい場面に同情しそうになるのだが、
言っておくけど、その写真、浮気しようとしている
若い子のでしょ!!
と、突っ込みを・・・。本書、こんなことの連続だったなぁ。

 果たして西村の抗いの行方は如何に・・・・。

 

◆昭和は老いがもっと早くやってきたのか?

 

この小説が書かれて60年くらい経つのかな・・・。
昔は老いに対する感覚が早かったのだなぁーと
感じずにはいられない。
また、結婚観も随分と変わったなぁ~。
今の日本の恋愛観や結婚観をもし西村が見たら
彼はどんな風に思うのだろうか。

平凡でよくある内容の小説ではあるけれども、
当時の価値観や生活ぶりがつぶさに描かれていたので、
退屈することなく読了。文章も自然で読みやすかったです。

「抵抗」という言葉が入っているタイトルからも、
迫りくる「老い」に一生懸命抗っている中年男性の姿が
物哀しいというか、なかなかリアルに描かれていました。

「世のおじさま方、がんばれ!」と、この小説に倣い、
自分の「老い」は棚に上げ、エールを送るのであった。