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【レビュー】キップをなくして:池澤夏樹

 

 

 キップをなくして:池澤夏樹著のレビューです。

キップをなくして (角川文庫)

キップをなくして (角川文庫)

  • 作者:池澤 夏樹
  • 発売日: 2009/06/24
  • メディア: 文庫
 

 

感想:きっぷをなくしたら、駅から出られなくなって…

 

なんと言っても、やっぱり池澤さんの小説、発想が面白い。
そして、最近読んだ「双頭の船」もそうだけど、亡くなった人との別れの「時」をとても大事にされている作家さんなのだなぁ…と、強く感じました。

 

「キップをなくしたら、駅から出られない。

キミはこれからわたしたちと一緒に駅で暮らすのよ、ずっと」

 

ちょっと設定が怖すぎる…と思ったのですが、これが意外にも面白く描かれています。4キップをなくしたことにより、イタルは駅の子になりました。駅の子は東京駅構内の小部屋で生活を共にします。食事は駅中の食堂、キヨスクのものは全てタダ。洋服などは遺失物の期限切れのものをもらうなど、生活自体はとても快適。電車で遠出も可能なので駅弁を買いに行ったりと…でも、改札から外には出られない。

 

そんな駅の子たちには、大事な役割が与えられている。その仕事とは?そして、子供の中にはミンちゃんという、駅で亡くなった子も含まれています。この子は何故ここに?

 

 

 

 

設定自体が不思議なことばかりで、次の展開が知りたくてとてもとてもこの本を手離すことができない時間でした。

 

ミンちゃんは幽霊だし、その他の子供たちはこのままずっと駅で暮らすことになるのか?や、謎の駅長さん等々、ゾワゾワしてもおかしくない内容なんですけど、そんなことは全く感じなかった。

 

とにかく、次から次へと不思議なカードを出して来る池澤さん。ん~~参った参った。後半はどんどん話が進み、そして、クライマックスへ。舞台は北海道まで移動します。こちらは、涙がジワジワと…。

 

読後は夏休みの終わりを感じさせられるような、ちょっと切なく寂しさが残ったけど、これは決して嫌な感情ではなく、むしろ充実した時間を噛みしめているような感覚でした。

ステーションキッズ達と過ごしたひと夏。私も忘れられない思い出となりました。