小泉今日子書評集 :小泉今日子著のレビューです。
☞読書ポイント
書評と小泉さんの生き方が絶妙なハーモニーで綴られる
我らがアイドル、 KYON 2(キョンキョン)こと小泉今日子。
キュートな衣装で元気よく歌っている姿がまるで昨日のことのように思い出されるのですが、本書を手にして、キョンキョンも私たちと一緒に歳を重ね、いろんな山を越えて
来たのだなーと深い思いに浸った。
本書は小泉さんが2005年から2014年までに書いた97冊の書評を集めたもの。
読売新聞に掲載されてきたものだそうです。
紹介されている本のジャンルは小説やエッセイ、コミック、ノンフィクション、詩集など。国内の現代作家の名がずらりと目次を埋めている。
ひとつの作品の書評はだいたい2ページくらい。どれも小泉さんの身近なことや生き方などと重ね合わせたような作品紹介となっている。そのハーモニーが絶妙で、読者の心を一気に引き付ける。
小泉さんの唯一の恩師という存在であった久世光彦さん。「テコちゃんの時間 久世光彦との日々(久世朋子著)」は、奥様が久世さんとの日々を綴ったもの。知り合いが書いたり登場したりする本を読むということは、やはり感じ入る部分や想いがとても深い。
「テコちゃんの時間」は天国にいる久世さんと小泉さんとの対話であり、故人を偲ぶ時間でもあるということが伺える。これは小泉さんじゃなきゃ書けない書評なのだと強く感じます。
もうひとつ印象的だったのは尾崎豊さんの「NOTES」の書評。
尾崎さんと同じ歳だという小泉さんが彼に抱いていたこととは・・・。
この話からは、芸能人としてじゃなく、ひとりの高校生だった小泉さんが尾崎豊のことをどう捉えていたかがよく解る。あれだけ当時騒がれていた尾崎豊。実はわたしも尾崎豊はちょっと苦手だった。歌も良いのに「どこが苦手なの?」と問われると上手く答えが見つからない。
今回小泉さんが書いていることに「そう、それだ!」と、ストンと腑に落ちたのだ。
あの頃私が尾崎豊に感じていた「何か」が、小泉さんの言葉によって引き出せたようでちょっと感動でした。
芸能人ならではの視点。一人の女性としての視点。大方、後者の視点からの書評が多いが、どちらもとても面白く拝読した。
「わ~キョンキョンもこの本読んでいたんだ!」「へぇーキョンキョンも同じ風に感じるのか~」と、当たり前であることも新鮮に感じました。
また、小泉さんの子どもの時の話や、あまり知られていなかった家族の話など、ポツリポツリと登場する。こちらからも意外な発見が!
本当はとっても遠い存在の人なんだけど、読んでいる時間はとても近い。
昔の友だちと話をしているうちに夜が明けちゃったような読後感。
個人的には書評より小泉さんの生き方のほうに目が向いてしまった感があるけど、それはそれでまた良かった気がします。それでもやはり読みたい本は生まれてしまったわけだけど(笑)
それにしても10年書き続けるってすごい。ん~自分はどこまで続けられるのか?10年後の自分はどんな本を読んでいるのだろうか?
10年前の書評を読み返して、小泉さんみたいに「自分自身をレビューする」欄を作ってひとこと入れるのも楽しいかもしれない。