沈むフランシス :松家仁之著のレビューです。
フランシスってなに?
装丁から動物ものかと思っていたのですが違いました(笑)
「フランシス」とはなんぞや?読む前からそればかり気になっていたのですが、答えは急がなくてもよさそうです。
舞台は北海道。
桂子という30代の女性が仕事を辞め、東京から安地内村にやって来て、郵便配達員の職に就きます。川のほとりで「フランシス」ととも生活をし、「音のコレクター」をしているちょっと変わった男と彼女は出逢い、恋に落ち、関係を結びます。
内容はこの二人の恋愛を静かに描いたものなのです。性描写も多いけど、サラッとしている。ただ、この男性には謎が多く「何者なんだ?何かありそう…」という人物。得体の知れない人に恋しちゃったけど大丈夫かしら?早くすっきりさせたいという気にさせられます。
フランシスはそんな恋に落ちた二人の静かな時間にしばしば登場します。
視覚・聴覚・嗅覚までも刺激されるような美しい文章
物語の筋がメインというよりも、雰囲気で読む小説なのかなぁ…。
読後に残るのはそこなのだ。
結晶のまま落ちてしんしんと降り積もる雪とか、星とか、渓流の音とか。
視覚・聴覚・嗅覚までも刺激されるような美しい文章が現れては流れて行くような…。
全体に漂う気配が静かに残るような作品であった。
さて、「フランシス」って?「沈む」って? 書きませんよ。
みなさんにも悶々としたまま、ぜひ作品に入ってもらいたいのです(笑)