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うずまきぐ~るぐる

本の紹介や日々のことをぐるぐるかきます

火山のふもとで:松家仁之

本の紹介(男性作家ま行)

火山のふもとで:松家仁之著のレビューです。

 

火山のふもとで

火山のふもとで

 

 

◆ 好みかどうか?楽しみにしていた作品。さて・・・

 

「沈むフランシス」を読み終わったとき、どう感想を

述べてよいのか戸惑いが隠せなかった。

そのくらい自分にとって掴み切れない部分が多かったのですが、

今回はそのようなこともなく、「なるほど、読ませる作品だ」
と納得した。しかも、デビュー作でここまでのクオリティー、

脱帽です。

 

松家さんの小説からは、独特な空間と時間の流れを感じる。

常に自然がそばにあって、静かで穏やかに流れる空間の中に

身をおく人々の日常が自分の中で一体化していく感覚が

本当に心地がよい。

 

本作は老建築家が経営する「建築事務所」の話。
なので、仕事の雰囲気が強い感じなのかと思いきや、

浅間山のふもとの山荘を「夏の家」とし、夏になると

事務所機能をこの別荘に移して仕事をするという設定なので、

忙しいながらもどこかゆったりとした時間が流れている。

 

入所したばかりの「ぼく」をはじめ、人々は東京を離れ、

この山荘にやって来て、「国立現代図書館」の設計コンペの

準備に取り組みます。

 

建築にまつわる話、老先生の言葉、美味しい食卓、

ご近所の人々との交流そして先生の姪と「ぼく」のひそかな恋。

これらの話がバランスよく、そして細かい部分まで行き届いた

丁寧な描写がより鮮明に読者の視界の助けになって広がってゆく。

 

建築家って格好いいなーって思っていたのですが、

一体どんな風に仕事を進めているのか実態をしらなかった私には、

なかなか興味深い話も多かった。

 

経験豊富な先生の建築への想いが語られる部分が特に好きで、

先生が語り始めると思わず集中して耳を傾けてしまう。

 

後で知ったことだけど、松家さんは建築関係のお仕事を

なさっていたわけでもなく、この小説を書くにあたって

特別な取材をされたわけでもないらしい。

 

─────「建築はずっと好きで、設計図集を見たり、
        いろいろな本を読みつづけてきました」

 

これには思わず「え?まじか・・・。」って声が出ました。
私はてっきりものすごい取材を重ねて来たのだろうなぁ・・・と

思っていたので、この発言にはびっくりです。

 

好きなだけでこんなに書けるとは・・・。

実際の現場とどのくらいギャップがあるのかは分からないけど、

建築という仕事観に触れられてよかったです。

 

余談ですが、この話を読んでいて学生時代のスポーツ合宿のことを

思い出しました。合宿なんて憂鬱そのものだったけど、洗濯場や

食堂なんかで先輩の目を盗んで好きな人と交わす視線や会話が

めちゃくちゃ楽しかったな~と。
本書に出てくる「ぼく」を見ていて甘酸っぱい記憶が

蘇りました(笑)

 

カリカリカリ
サリサリサリ
朝の仕事が始まる前に鉛筆削る音。

 

日常の些細な音までも読み終わったあとは愛おしく、

先生たちと過ごしたあの夏は「ぼく」にも私たちにも

心にいつまでも刻まれた特別な日々に・・・。

 

uzumaki-guruguru.hatenablog.com

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