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臣女: 吉村萬壱

 臣女: 吉村萬壱著のレビューです。

臣女

臣女

 

 

◆妻がどこまでも巨大化してゆく・・・

 

 

羽田圭介さんが、テレビでお薦めしていたので読んでみたが、
ん~これはまたかなり個性的な作品です。

 

主人公は高校の非常勤教師のかたわら小説を書いている男。
彼は教え子と結婚しているが浮気をしてしまう。

 

因果関係は不明だが、その頃から妻が巨大化してゆく。
骨をきしませ、痛みに苦しみながら、日に日に大きくなる妻。
やがて大きくなりすぎて外に出ることはおろか、

自力でトイレへ行くことすらもできなくなる。
しかも、体が大きくなると食べる量も半端じゃない。

 

排泄の世話から、大量の食の確保まで、夫は浮気の罪悪感もあり、
献身的に妻の介護をするようになる。

家が汚物まみれになり、臭いも酷い状況になるなど、
生々しく描写されていてる。

やがて、近所の人々も異臭に気付き、何度も苦情を言いに来たり、
彼の同僚や母親も訪ねて来ては「なにかある」と疑いの目を

向けるようになる。誰かに干渉されればされるほど、

ますます妻のことを隠そうとする夫。
生活は転がるように崩壊へと向かう。

 

妻はついに4メートルを超え、いよいよどうにかしなければ

という追い詰められた状況へと発展し、彼は妻と二人で

家から脱出しようと試みるのだが、巨大化した妻を外に

連れ出すだけでも大変なわけで、あれこれ緊張を強いられる

シーンが続く。

 

 

これは一体どういったジャンルの小説と呼ぶのだろうか

 

 

すごくシュールで、ホラーっぽいものを感じたり、
孤独な介護生活をうんと形を変えて表現したもののようにも

思える。また最終的には純愛小説とも・・・。

 

妻の細かい心情はほとんど語れていないので、

一体どんな人物であったのか、分からないまま話は進むのだが、

ラストに来て妻のことを知り、断片的ではあるが、

色々な場面が走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
それがなんとも切なくて。

 

また、ひとりで問題を抱え込んでしまうという、
介護の現場で起きる悲痛な事件と共通するものも
感じずにはいられません。

 

・・・と、ひとつに括れない奥深い小説であるのです。

 

いやぁ・・それにしても奇想天外な設定です。
最初はちょっと不気味な小説を読んでいる感じでしたが、
徐々に「えらいことになって来た・・・」と、私までもが
余裕がなくなってゆく感じでした。

 

決して気持ちのいい作品とは言えないけれども、
強烈な印象を残す、ぶっ飛んだ1冊ではないだろうか。