マルシェ・アンジュール:野中柊著のレビューです。
夜中のスーパーへきっと行きたくなる物語
今では24時間スーパーも珍しくない存在になりました。
たまに遅くまで飲んで終電で帰って来た時など、灯かりにつられてなんとはなしに立ち寄ったりするのですが、昼間のスーパーとやはりどこか違った雰囲気があります。
人との距離も遠いので貸切りっぽく、気持ちも大きくなり、要らぬものまで買ってしまったりと。あのゆったり感は、夜ならではの雰囲気ですよねぇ。
マルシェ・アンジュールは24時間営業の高級スーパーマーケット。
夫と子供が眠った深夜に、こっそり家を抜け出すことを愉しんでいる主婦。美しい商品たちを眺め、デリでお茶をしながら日常とは違う世界に浸るちょっとした現実逃避。
そんな真夜中のスーパーマーケットで思わぬ人と再会。そして…。
マルシェ・アンジュールに集まる様々なお客さんたちのちょっとした話が全部で6編。万引きしているシーンを目撃したのをきっかけに恋人になった二人の話。
30歳の誕生日に電話するという約束が果たされた男女の話。
週末にのんびり家デートを楽しむ恋人の話。
このスーパーに勤める女性の話。
…等々、派手でも地味でもない短編。
どの話も後味が良く、そしてこのスーパーが醸し出す雰囲気とマッチしてサラっと読めてしまいます。お休み前の読書にぴったり。
野中柊さんの本は初めて読みました。癖がなく、とても読みやすい。そして、何といってもちょっとお洒落。
アンジュールは日本語で「ある日。そして、いつか」。まぁ、なんてお洒落な店名なんでしょう。夜中のひっそりした時間帯の高級スーパー。美しい野菜や果物、見慣れないお菓子のパッケージの数々。今の時期なら、ホットドリンク目当てにちょっとしたナイトトリップ。厚着して出かけたくなりました。