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西洋菓子店プティ・フール:千早茜

 

 西洋菓子店プティ・フール:千早茜著のレビューです。

西洋菓子店プティ・フール

西洋菓子店プティ・フール

 

 

◆過剰な演出もなく、登場人物たちの気持ちが

 いつの間にかスーッと入って来る心地よさが実感できる恋愛小説

 

 

恋愛や結婚を扱う小説はこの世にたくさんあって、
自分の経験を重ね合わせ共感を呼ぶものから、
現実離れしていてまったく理解できないものまで、
実にいろいろなパターンに出合う。

 

本書は甘そうなタイトルですが、内容はいたって

現実的な男女の恋愛を描いたもの。

 

過剰な演出もなく、登場人物たちの気持ちがいつの間にか

スーッと入って来る。無理なく読める心地よさを感じることが

できる内容です。

 

し・か・も、タイトル通り、ケーキの話が存分に用意されていて、
次第に目が爛々としてくるじゃありませんか。

 

でも、人々の人間模様は極めてビターで、
「甘い」「苦い」「甘い」「苦い」・・・と、ケーキを

食べたいが、恋の行方も気になって・・・と、脳内的には

忙しい。

 

舞台は下町の古い洋菓子店。
職人気質のじいちゃんは、昔ながらのケーキを作る。
一方、孫の亜樹はフランス留学、一流洋菓子店で勤めたという

経験があり、作るケーキもフランス菓子。そんな二人が

厨房をともにする。

 

ケーキ作りのあれこれのシーンと同時進行するのが、
亜樹を中心とした人々の6つの話。
各章で個々の心の中を覗いてゆく。

 

章が変ってしばらくすると、「あーあの人の話なのか!」と、
繋がりに気付き、彼、彼女の真相がひとつずつ明かされてゆく

という面白さがある。

 

そのたびに、今まで一方の角度からしか見えなかった

各人々の気持ちが明らかになり、恋するしょっぱい気分に

させられ、チクチクと胸が痛む。

 

特に亜樹の彼が突然の別れの切り出す部分は、リアルな自然さを

感じた。

 

恋愛小説だとわりに同性に共感する部分が多い私だけれども、
今回はこの彼氏の気持ちの流れにグッとくるものがあった。

 

案外、別れを決断する時ってこんな感じだろうと。
大袈裟な演出もなく、ごくごく自然にその時が来た様子が
とても上手く描かれている。

 

 

◆脇役のじいちゃんの格好良さににも注目!

 

 

そして、何と言ってもこの小説で、格好いいのが亜樹の

じいちゃんだ。

 

なぜじいちゃんのケーキは愛され続けているのか?
凝ってはいないけれど、ほっと肩の力が抜けるひとときを

くれるじいちゃんのケーキ。

 

じいちゃんの仕事ぶりを通じて、亜樹は少しずつケーキ作りに

大切なものに気づき始める。それは、生きる上でも大切な

ものであるということにも。

 

やはり、仕事も恋愛もじいちゃんには敵わない。
じいちゃん、格好いい!! 発する言葉ひとつ取っても

格好いいんだな。ひそかにばーちゃんも!

 

あの店がなくなってしまったどうしよう・・・と、思わせる店。
じぃちゃんが築いてきた「西洋菓子店プティ・フール」は

そんなお店なのだ。

 

そして、亜樹とじいちゃんの「西洋菓子店プティ・フール」の
第二幕がもうすぐ上がる。

 

読後は例によってレビューより先にまずは次買うケーキを

妄想する時間。


洋菓子大好きな私ですが、今回ひときわ気になったのは

意外にも「南蛮焼」という和菓子の存在だった。

だって、みんな美味しそうに食べているんだもん。
いつか食べてやる!(涎)