職業別 パリ風俗 :鹿島茂著のレビューです。
感想・内容 フランス文学の手引きとなる1冊。助かります!
フランス文学初心者の私。
読書をしていると何度か「当時この職業はどんな位置づけの人が就いていたのだろうか?」なんて疑問を持つことが多い。
しかし、そんなことをいちいち気にしていると、一向に読み進めることができないので、大雑把に自分なりの推測で読むしかなかったのだが、これでは本当の面白さが理解できていないのではないか?・・・ということで、そうだそうだ、こんな時は鹿島先生だ!と、図書館から呼び出しました(笑)
あとがきで鹿島氏は
「本書は一冊まるごと注のような本である」
と言っています。注が主体の本。そうそう、まさに欲しかった内容だったのです。
しかも本書は「バルザック<人間喜劇>セレクション」の責任編集者をされていた時期に書かれた本だけに、引用もバルザックの作品からが多く、非常にありがたい!
さて、構成は当時の代表的な職業を各章で詳しく紹介してゆきます。小説の中に出てくる注釈をうんと掘り下げた内容で、お針子、門番女、公証人、仕立屋、乳母・・・等々、日本の制度との細かい違いなど、かなり発見できます。
このあたりの違いがあったにも関わらず日本に当てはめて読んでいたので、ちょっとしたモヤモヤ感があったのですが、本書を読んで納得することが多かったです。
さまざまな職業の中で、やはり私は女性なので当時の女性たちの職業により興味がもてました。
グリゼット(お針子)の恋の行く末は悲しいものだし、ねずみのように動き回るステージママの執念深さ、門番女の情報網のすごさなど、どれも読みごたえがありました。
と、まだまだ圧倒的に知らないことだらけだし、実際の作品に触れないとその疑問すら持てないものもあり、一回読んだだけでは理解できない職業もありました。でも、総合的に考えると、こんな「あんちょこ」のような本にどれだけ刺激をもらい、助けられるか。
鹿島氏の「馬車が買いたい」も以前読んだのですが、その時もきっちり理解したとは言えない状況でしたが、その後「馬車」が出てくるシーンは、少しだけ踏み込んで眺められるようになって来ています。
こんな具合で一歩一歩、知識を積み重ねながら、ゆっくり作品に触れていこうと思っています。