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うずまきぐ~るぐる

本の紹介や日々のことをぐるぐるかきます

闇市 :マイク・モラスキー

闇市マイク・モラスキー著のレビューです。

闇市 (シリーズ紙礫)

闇市 (シリーズ紙礫)

 

 

◆作家もいろいろ、闇市もいろいろ

 

 

以下は、本書の作品群。

「貨幣」 太宰治
軍事法廷耕治人 ※全集未収録作品
「裸の捕虜」 鄭承博
「桜の下にて」 平林たい子
「にぎり飯」 永井荷風
「日月様」 坂口安吾
「浣腸とマリア」 野坂昭如
「訪問客」 織田作之助
「蜆(しじみ)」 梅崎春生
「野ざらし」 石川淳
「蝶々」 中里恒子

 

「街娼 パンパン&オンリー」が面白かったので、
引き続き興味深い「闇市」の世界へ潜入してみました。

 

闇市とは必ずしも<市場>を指すばかりでなく、特定の場所をもたない闇売買の
市場の側面も数篇の作品で窺える。そして物資のほかに日本円もドルも流通し、
闇屋自身も千差万別であったことが鮮明に描かれている。
と、解説でモレスキー氏は語る。

 

当時の混沌とした闇市の様子が見られるのかと思っていたのですが、
作品を読み進めていくうちに、意外にも「市場」そのもののシーンが
少ないことに気づく。

 

その典型ともいえるのが、 織田作之助「訪問客」 。
小説家である十吉のもとへ、「闇屋」が彼の自宅にやってくるという話。

 

3部からなる話は、家門君代、関口秋男、野々宮ハツが登場し、
作家の必需品であるタバコをはじめ闇商品を上手いことを言って
売りつける。

 

どの闇屋もユニークで見どころある人物だが、特に関口秋男の口から
零れ落ちる言葉が興味深い。

 

「絶対闇のものを食べないことにして、配給だけでやって行くと、
必ず病気になると、医者が言っていますからね。だから、闇のものは、生命維持のために必要欠くべからざる必需品です。それだのに、われわれは高くて買えない。で、僕はいっそ闇屋となって、他の闇屋より少しでも安く売ることにすれば、人もわれも益するわけだと、思ったんですよ。」

 


社会奉仕とも取れるこの上手い語り。
彼は堂々と「闇屋」と名乗り、玄関から入って行くと言う。

 

今で言う「訪問販売」的な商売といった感じで、
そこには「闇」というものをあまり感じさせない。
それもこれも自宅というあまりにも日常空間で闇の売買
が行われていたからだ。
そういう意味でもこの作品はとても印象的でした。

 

レビューは1作品しか取り上げませんが、その他の作品も十人十色、
個性を発揮している。

 

作風は異なるものの全体的なトーンはまとまっていて、
どこを開いても当時のちょっと埃っぽい匂いが漂う。
前回も同じことを感じたですが、作品の選出が素晴らしいなぁーと。

 

また、モラスキー氏の解説も読みやすく、作品の解説だけに止まらず、
当時の考察がなされていて、より一層作品の理解を深めてくれる

ものになっている。


闇市」という多面的な現象を知るのに大変有効な作品群でした。

「シリーズ紙礫」ということですが、次巻の出版はあるのでしょうか?
まだまだ読みたいシリーズです。

 

 

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