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【レビュー・あらすじ・感想】ミナトホテルの裏庭には:寺地はるな

 

 

ミナトホテルの裏庭には:寺地はるな著のレビューです。

ミナトホテルの裏庭には (ポプラ文庫)

ミナトホテルの裏庭には (ポプラ文庫)

 

感想・あらすじ

取り立てエキサイティングな場面があるとかではないけれど、寺地さんの小説は静かに引き込まれるものがある。それが登場人物から感じられるものなのか、はたまたストーリーによるものなのか分からないのだけど、気持ちよく呼吸をしながら読める気がする。

 

前作「ビオレタ」と比べると文章や話の流れがより自然になり、グッと洗練されたなぁーと感じました。

 

 

 

 

舞台は閑静な地にある「ミナトホテル」。大正末期に建てられた宿泊施設は客室6部屋。ちょっと訳ありの人々が泊まりに来る。

 

主人公・芯は現在祖父と穏やかな二人暮らしを続行中。祖父は「互助会」というものを仲間うちで作っていたのだが、その仲間である陽子さんが亡くなり、そろそろ一周忌を迎える。

 

その法要をホテルの裏庭で行おうと計画するも、庭に入るには「鍵」が必要。しかし、片付け下手の陽子の部屋は雑然としていてどこに鍵があるのか分からない。

・・・ということで芯が鍵探しにかり出される。

 

ホテルは現在陽子の息子湊篤彦が継いでいるのだが、芯と初対面の日から大怪我をしてバタバタと話がスタートする。

 

ホテルにやってくる人や、祖父の友人、芯の会社関係などを絡めながら陽子さんの法要に向け展開される。

 

 

 

 

ごくごく普通の話ではあるけれど、みんななにかしら抱えているものがある。それを静かに見守る人がいたり、密かに助けたりと、全体を包む空気間が柔らかい。また、時々心に沁み込んでとくる言葉に出合い温かい感情が押し寄せる。

 

さて、本作は「手のなかにある」というもうひとつの話が入っています。ここは今は亡き陽子さんの語りになっている。ひと段落したあとに登場する話で、ちょっと気を抜いていましたが、短い話にもかかわらずホロリと余韻を残すいい話でした。

 

寺地さんの小説はやっぱり居心地が良い。次作もますます楽しみになった。