港町ヨコハマ異人館の秘密:山崎洋子著のレビューです。
人力車を引いて横浜をかけめぐるおりんの周りはミステリーがいっぱい
本格的なミステリーを期待しちゃうとちょっと拍子抜けしてしまうけれども、
YAミステリーということで、若い娘が友達のためになんとか力になろうと
舞台である横浜を活き活きと駆け巡る様子が楽しめる。
明治38年関東大震災前の横浜はもっとも華やいでいた時期だという。
いつかは外国へ行ってみたいと、地元のミッションスクールに通う
おりんは、夜は家業である車夫の恰好をし、人力車を引いて横浜を
駆け回っている。
ある日、彼女はドレスを着て飛び降り自殺をしようとする同級生の喜美を
目撃し、助けることに。なんでも喜美は「悪魔からの手紙」を受け取り
怯えながら過ごしていたという。
一体だれがこんなことを?そこには喜美の父親の不審な過去が・・・・。
お転婆で考えるよりも体が先に動いてしまうおりんは、
そんな喜美のことを気にかけ、事件の真相を探ろうと
自分の身の危険を冒してまでもあちこち動き回るのだ。
横浜が舞台だということで、ホテルニューグランドや
山手、元町、馬車道等々聞き慣れた場所も数多く登場し、
とても身近に感じさせられる。
話はやがて喜美が父親に再会し、一緒に住むということで
横浜を去ったという情報のみがおりんに届く。
が、おりんはその情報に疑いを持つ。
喜美は本当に横浜を去ったのだろうか?
真相は後半、思わぬ方向へと進む。
実際の地図が表紙裏に載っているのですが、
川で区切られた町からはのどかな雰囲気が伝わってくる。
人力車があった横浜とはどんな感じだったのだろうか?
当時、豪華ホテルと呼ばれていたニューグランドホテルが
残っていることが、唯一、おりんと私たちが時代を超えて
繋がっているような気がして、とても不思議な気分になった。