女神記:桐野夏生著のレビューです。
感想・あらすじ:神であっても、男と女。死んでも魂は叫び続ける
遥か南の島、巫女の家に生まれた姉妹の使命と宿命を追っていく物語。
大巫女を継ぐ使命を受け「陽」の存在である姉。
妹は村のしきたりで「陰」の存在として闇の巫女になるのだが、掟に抗い、好きな男と一緒に島から逃げてしまうのである。逃亡中の舟の中で子供を産み、そして、好きな男に、なっ、なんと殺されてしまうのである。
といういきなりの展開に、唖然…。
16歳で死んだ妹は、地下神殿で一人の女神と出逢う。
イザナミ、黄泉の国の女神です。
ここから古事記の話と姉妹の話がうまく絡み合い、話の面白みが急ピッチで上がって行きます。
死んでもなお殺されたことに納得がいかない妹。
やがて、蜂になり命からがら子供と男に会いに行く場面は手に汗を握ります。
よく人は死んだら蝶とか虫になって会いに来る…ということを聞いたことがあります。
そう言えば…なんてことが私自身、経験があるので、結構あることなのかも知れないなぁ....など読みながら感じました。
この話の場合は会いに行くことによって、男の身勝手な裏切りを知ってしまうのです。
その裏切りに対する憎しみ、失望…彼女が最終的に出た行動は…。
陰と陽、昼と夜、生と死、光と闇、男と女…
2対の言葉が常に付きまとった話でもあった。
特に男と女に関しての執着、嫉妬、愛情、憎しみなどは壮絶です。
神話という部分を意識をしなくても無理なく話の中に入っていけました。
「島」という閉塞感ある雰囲気を本当に桐野さんはうまく使う作家だなぁ。
「島の桐野」と言いたくなる。
「新・世界の神話シリーズ (THE MYTHS)」
あらゆる物語の原型である神話を世界トップクラスの作家たちが、今の視点をもって新たに語り直し、それを世界同時刊行するという途方もないプロジェクト。33カ国が参加。
日本代表がこちらの桐野さんの作品だそうです。
桐野さんの作品はもれなく読むようにしてきたのにアブナイ、アブナイ。
こんな面白いものを危うく見逃すところでした。
女神記 単行本