子の無い人生:酒井順子著のレビューです。
- 作者:酒井 順子
- 発売日: 2018/10/24
- メディア: Kindle版
人生を左右するのは「結婚しているか、していないか」ではない、「子供がいるか、いないか」
繊細な問題に踏み込んでゆく酒井さん。決してヒステリックにならず、冷静にひたすら考察をされている姿にいつも感心させられます。
今回は「子供がいる人、いない人」というテーマの考察であります。
酒井さんご自身が独身ということもあって、普段は独身女性を取り上げた内容が多いのですが、今回は既婚でも子供がいる人といない人とでは、やはり大きな違いがあるという点に注目し掘り下げてゆく。
年賀状の話は、酒井さんが身をもって体験したもの。
子供の写真入りの年賀状については毎年賛否両論話題になりますが、最近では子ナシ族用にと「写真なし」の年賀状をわざわざ作る人がいるとのこと。
そのような話は私もどこかで聞いたことがあるけど、酒井さんの話から見えてきたものは、そういうものを用意する人がどうしてこんなにも無神経なことを言うのだろうか?ということ。まぁ、一緒にイライラさせてもらいましたよ(笑)
人生を左右するのは「結婚しているか、していないか」ではない、「子供がいるか、いないか」なんだと酒井さんは言う。
とかく既婚、独身で分けられていることが多かったなか、子供を軸にした考察は意外に新鮮なのではないだろうか。
独身女性は「結婚しないの?」と他者から嫌というほど言われるが、既婚子なし女性は「子供はまだ」という余計なお世話的なプレッシャーがある。一人を産んだら「2人目は?」と。このうんざりする質問はあまり聞こえなくなってきたものの、やはりいまだに存在しているのも確か。
その根底には
「2人以上の子を持って初めて、結婚は完成したと見なされる」らしいのです。
政治の世界でも、女性議員は経歴や横顔を紹介する欄において、子供がいる女性閣僚は必ず子供についての記載があるという。
対して男性閣僚は子の数が多い人、つまり特殊事例としてあえて記載する程度。ということで、男性政治家にとっては子供がいる、いないは大した問題ではないということが見えてくる。逆に女性閣僚にとっては「母であるかどうか」は重要だということが垣間見られる。
こういった話題は枚挙に暇がない。酒井さんはそれらをひとつひとつ拾い上げ冷静に分析する。
そのほか、お墓の話はかなり面白かった。沖縄の「トートーメー」という位牌の話から見えてくる独身女性へのシビアな風習など目から鱗であった。ご自分の墓問題からはじまった話が、沖縄の葬儀等の風習にまで広がってゆくあたり、酒井さんならではの面白さである。
子ナシ高齢社会がもうすぐそこに迫っている。「子の無い人生・老年編」を酒井さんはきっと書かれ、私もきっとその本を読む。そのころは、年賀状自体もなくなり、「写真があるとかないとか、懐かしい話だね。」なんてことになっているかもしれない。