ききがたりときをためるくらし: つばた英子,つばたしゅういち著のレビューです。
感想・あらすじ 「土」を感じる時間。
大地を耕し、日々の収穫を喜び、道具を愛しみ、夜が来て夫婦で食卓を囲む。一見、単調そうな生活も、都会暮らしの私には新鮮で学べる部分も多々ありました。
まずはご夫婦のプロフィールを。
つばた修一
1925年生まれ。自由時間評論家。東京大学卒業後、アントニン・レーモンド、
板倉準三の建築設計事務所を経て日本住宅公団入社。
69年「高蔵寺ニュータウン計画」で日本都市計画学会石川賞。
広島大学教授、名城大学教授などを経てフリーで評論活動を続ける
つばた英子
1928年生まれ。愛知県半田の200年以上続く造り酒屋で育ち、
50年、修一氏と結婚。キッチンガーデナーとして、大地に根ざしたていねいな暮らしを実践中
本の中で少しずつにお二人の生い立ちが語られてゆくので、プロフィールを知らなくても、お二人の出会いから、娘さんやお孫さんのことなどの存在を知ることができます。
これは後に知った情報ですが、私が個人的に大好きだった「阿佐ヶ谷住宅」の建設に修一さんが携わっていたという。
お二人の生活から感じたなにかと、阿佐ヶ谷住宅の風景とが重なり妙に納得するという表現は変かもしれないけれど、共通点を見い出せた気がします。
その証とでもいうのか、家の佇まいといい、家具や道具といい、趣味の良いものを数多く目にし、「やはりどこか一味違うな」と感じずにはいられない。
ご夫婦の毎日は、最低限の食べ物は家庭菜園で作り、あくまでも自分たちのことは自分たちでするという。役割分担が自然に出来ているようで、顔を合わす時間があまりないというほど毎日やることが多く忙しいそうだ。
また、年金暮らしで慎ましやかな生活ではあるが、こだわるところはとことんといった感じで、次の世代に残すことを視野に入れて生活をしています。
特に土地を残す=野菜や植物が育ついい土を残すと言う考え方はしびれました。土地本来の継承は「土」のことでもあるのだなぁと。
老後の生活として羨ましく思う部分が本当に山ほどあるのだけれども、真似できるかと言ったらやはり難しそうだな・・・と思うのは、きっと私だけではないと思う。自給自足するのに必要なスペースのある土地、医者いらずの健康な体、マメな畑仕事と、マメな手仕事。虫との共存等々・・・。これらを一からシニアになってからはじめるのはとてもとても。一番いいのは身近な友人がこのような生活をしてくれれば・・・と、最終的には都合のよいことを考えたりする(笑)
ということで、
「お金がなくても何かが溢れているすてきなおばーさん」を目標に、英子さんに習って少し早めに必要なサプリメントを毎日飲んでおこう・・・と。
最後に・・・。
阿佐ヶ谷住宅が取り壊されてゆく風景を見た時のあのなんとも言えない気持ちを思い出す。修一さんも阿佐ヶ谷住宅ももうこの世に存在しない。今になってどうしようもない寂寥感に包まれてしまう。ただただ残念でならない。
津端英子さんの現在
最近気になって調べていたら、英子さんは2018年に亡くなったそうなんです。享年90歳。亡くなるギリギリまで普通の生活をしていたとの情報があります。大好きなご自宅からしゅういちさんの元へ旅立てたのかな。....と思いたいです。ご冥福をお祈り申し上げます。
文庫本
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